日本地球惑星科学連合2023年大会

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[J] オンラインポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW24] 都市域の水環境と地質

2023年5月25日(木) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (8) (オンラインポスター)

コンビーナ:林 武司(秋田大学教育文化学部)、宮越 昭暢(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/24 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[AHW24-P07] 極小微動アレイ探査による地下水位測定手法の検討

*宮下 雄次1濱元 栄起2先名 重樹3 (1.神奈川県温泉地学研究所、2.埼玉県環境科学国際センター、3.防災科学技術研究所)

キーワード:微動探査、地下水位、繰り返し測定、Simple Inversion Method、Simple Profile Method

1.はじめに
地下水資源を保全・評価するためには、資源の全体量とその変化量を、面的に評価し、継続的にモニタリングすることが不可欠である。地下水資源の場合、各種の地質調査に基づく帯水層構造の把握と、観測井を用いた地下水位のモニタリングが行われるが、最適な地点や密度で観測井を設置できない場合も多く、井戸を用いない帯水層構造と地下水位の測定手法の開発が求められている。
物理探査手法の1つである「微動アレイ探査」は、探査地点における鉛直一次元方向のS波速度構造を求める探査手法である(例えば、ISO24057:2022)。S波速度は地盤の物性値により決定されるため、S波速度の鉛直分布から帯水層や基盤の分布などの地質構造を把握することが出来る。一方、地盤は土や岩石などの固相部分と、地下水や土壌水などの液相部分、地表付近の不飽和帯に存在する気相部分の三相から構成されている。このため、地盤中の液相部分の割合(≒地下水位)が変化すれば、S波速度に変化が生ずることが予想される。高橋(2019)は、岩石のS波速度と飽和度の関係についてのレビューとモデル解析を行い、水分量の変動がS波速度影響を与えている可能性を指摘した。
そこで本研究では、同一地点で異なる時期に微動探査を行うことで、季節的に変化する地下水位を検出することを目的して、S波速度分布の季節変化について検討を行った。

2.方法
微動探査は、地下水位観測井との比較が可能な2地点(神奈川県足柄平野上部地域(H54,R50))において、2014年6月~11月までの期間中に9回行った。
一方、気候や地形の異なる4地域(神奈川県西部:12地点・埼玉県中央:17地点・山梨県中西部:11地点・福島県中通り:16地点)における2時期の微動探査を2019~2021年にかけて各地域2回ずつ行った。
2014年における探査は、中心及び中心から距離0.6mに3台等間隔に配置した計4台で実施した。一方、2019~2021年度における探査は、上記4台による極小アレイ配置に、中心から距離5mに2台の微動計を配置する異形アレイ配置を追加して行った。
計測に用いた微動計は、2014年における探査は白山工業製微動観測キットJU210、2019年度における探査は同微動観測装置JU410を用い、サンプリング間隔を200Hzで行った。また微動探査結果の解析は、先名ら(2014)の方法に従っておこなった。

3.結果及び考察
2014年に9回行った足柄平野2地点(H54地点、R50地点)における微動探査データを、SIM法によりS波速度鉛直分布に変換し、地下水位との対比を行った。地下水面近傍におけるS波速度は、H54地点で370~880m/s、R50地点で230~370m/sであり、2地点において、S波速度の速度帯が異なっていたほか、同一地点においても、探査時期の違いによって、S波速度が大きく異なる結果となった。また、地下水面近傍を挟んで、上下でS波速度が変化している探査が、H54地点では9探査中6探査、R50地点では9探査中8探査で見られた。一方、各探査ごとの解析S波速度分布の差をとった結果、深部ほど差が大きくなり、読み取り精度や解析方法に課題があることが明らかとなった(宮下ほか2021)。
SIM法では周波数と位相速度の関係が変化する点を読み取り、逆解析を行うことでS波速度の鉛直分布を算出している。そこでSIM法における読取の誤差をなくすため、SPM法により直接S波速度の鉛直分布に変換し、同一地点で異なる時期に行った微動探査におけるS波速度の深度別変化量を算出し、地下水位との比較を行った。その結果、H54地点では、9探査中6地点でS波速度の変化深度と地下水位深度との間に対応が見られた。一方、R50地点ではSPM法により算出されたS波速度の深度分布が、地下水位よりも深い位置であたったため、地下水位の変化と対応させることは出来なかった。
今後は引き続き解析方法について検討するほか、4地域における微動探査結果について併せて検討を行う。


4.参考文献
先名重樹・長郁夫・藤原宏行(2014):微動を用いた浅部構造探査の高度化(その2)~自動読み取りアルゴリズムの適用~、JpGU2014,SSS35-P02.
高橋亨(2019):岩石のS波速度と飽和度の関係についてのモデル解析、JpGU2019,HTT22-P03.
宮下雄次・濱元栄起・先名重樹(2021);極小微動アレイ探査による地下水位測定手法の検討,JpGU2021 AHW24-P04.
ISO (2022) : ISO 24057:2022 Geotechnics - Array measurement of microtremors to estimate shear wave velocity profile.