日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS14] 陸域海洋相互作用ー惑星スケールの物質輸送

2023年5月24日(水) 15:30 〜 17:00 展示場特設会場 (3) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:山敷 庸亮(京都大学大学院総合生存学館)、Behera Swadhin(Climate Variation Predictability and Applicability Research Group, Application Laboratory, JAMSTEC, 3173-25 Showa-machi, Yokohama 236-0001)、佐々木 貴教(京都大学 大学院理学研究科 宇宙物理学教室)、升本 順夫(東京大学大学院理学系研究科)、座長:Behera Swadhin(Climate Variation Predictability and Applicability Research Group, Application Laboratory, JAMSTEC, 3173-25 Showa-machi, Yokohama 236-0001)、升本 順夫(東京大学大学院理学系研究科)、山敷 庸亮(京都大学大学院総合生存学館)

15:45 〜 16:00

[AOS14-07] 宇宙海洋創出のための宇宙養殖技術

★招待講演

*遠藤 雅人1 (1.東京海洋大学)

キーワード:水産養殖、重力環境、星間輸送、物質フロー、宇宙海洋

人間が地球外において生活する場として地球環境を切り出した人工環境の概念としてコアバイオームがある。コアバイオームの中での水圏は宇宙海洋と呼ばれるもので大きなプールに海水を張ってその中に魚や甲殻類、海藻などの選択された水棲生物を放って生態系を構築し、陸圏などのコアバイオームとの間で物質のやり取りを行い、地球環境を模擬することが計画されている。一方で宇宙養殖では高密度で生物を個々に生産し、それぞれの生物をモジュールに分けて生産しながら、物質の移動を制御してそれぞれの生物量を一定に保つことが考えられている。
この中でまず必要となるのがプールを構築するための資材をどこから調達するのかということが問題となる。コアバイオームを建設する現地で調達できる資材は現地で調達し、できないものは地球あるいは他の星から輸送することになる。次にコアバイオームのハードとなるプールや大気を囲う覆いなどの建設を行うことが必要となる。最後に選抜された生物を地球から目的の星へ輸送し、健全な状態で用意された人工的な海洋環境に放つ必要がある。
この星間輸送には宇宙での養殖を想定して確立された技術が応用できると考えられる。実際の星間輸送を想定した場合、地球から月までは3日、火星までは最短で200日前後を要する。この間、水棲生物の生命を維持しながら輸送することが必要となる。3日であれば、ほとんどの水棲生物で卵から親まで生命を維持することができると考えられるが、輸送の観点からは重量が軽く、給餌の必要もない受精卵での輸送が望ましいと考えられる。しかし、魚類や甲殻類では、精子の凍結保存は可能であるが、卵は比較的大きいために保存技術は確立されていない。このことから長期の輸送では餌を与え、水質を維持しながら魚などを運ぶ必要が出てくる。この際には循環式養殖システムと物質のリサイクルが有効であり、魚介類飼育からの廃棄物を植物の肥料として利用し、
野菜などの食料を生産することも可能である。
今回は宇宙海洋の創出を目指した水棲生物の星間輸送を想定し、宇宙養殖で利用可能な技術とその課題について整理する。