日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS15] 海洋物理学一般

2023年5月23日(火) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (5) (オンラインポスター)

コンビーナ:土井 威志(JAMSTEC)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/22 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[AOS15-P02] HFレーダーを用いた対馬海峡変動の初期解析

*松尾 俊弥1上原 克人2 (1.九州大学大学院総合理工学府、2.九州大学応用力学研究所)

キーワード:東シナ海、日本海、計測、経年変化

九州大学応用力学研究所では2002年から2020年の19年間、対馬海峡に7基のHFレーダーを設置し、海峡内の流れを監視してきた。HFレーダーは、船舶観測とは異なり、時間的・空間的に解像度の高いデータを広範囲に渡り取得することが可能である。この特性を生かし、HFレーダーによって得られた表層流の毎時データからは、これまで東水道の南西部から北東部を数十日周期で横断する対馬渦の発生や海峡沿岸域の流れ場に見られる複雑な季節変化などが見いだされている。観測終了を踏まえ、本講演では、現在行っているデータ整備の状況と、観測期間を通した予備解析の結果を紹介する。使用したデータは、対馬西海岸(2地点)、東海岸(3地点)、並びに壱岐と志賀島(各1地点ずつ)に設置されたCODAR並びに長野日本無線製のHFレーダーによって測定された毎時表層流速データである。解析に当たっては、まず複数のHFレーダーによって測定された視線方向流速を組み合わせ、緯度・経度0.025°間隔の格子点における2次元流速ベクトルに変換した。表層流速の取得範囲は、電波の受信状況によって異なっていたが、最低1地点でもベクトル流速データが得られた時間の割合を表すデータ取得率は、対馬海峡西水道(観測期間2017年まで)で約90%、東水道で約80%であった。さらにYoshikawa et al.(2009)の手法と気象庁の風データ(MSM-GPV)を用いて、流速を吹送流成分と地衡流成分に分離した。変換後の毎時流速データは、配布や解析のしやすさを考慮し、北緯33.5度~34.7度、東経128.5度~130.5度の範囲の緯度・経度講師データとして、CF規約に準拠したnetCDF形式のファイル(1ファイル3ヶ月分)に格納した。これまで対馬西方で観測された流速データの解析事例が少ないことから、本研究では主に西水道の流動構造に関する初期解析結果を紹介する。なお、HFレーダーより推算した西水道の月平均地衡流(海域平均)は、厳原・巨済島間の月平均水位差と高い相関を示し、本研究にて行った吹走流と地衡流の分離は妥当であったと考えられる。対馬西方の西水道の流れの特徴として、水深が深い地点での表層流が強くなる傾向があり、水深100mを閾値に変化していることが分かった。講演時にはこのような流れと海底地形との関係を掘り下げるとともに、地衡流の季節・経年変化について示す予定である。