日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG25] 文化水文学

2023年5月24日(水) 15:30 〜 16:45 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:中村 高志(山梨大学大学院・国際流域環境研究センター)、近藤 康久(総合地球環境学研究所)、安原 正也(立正大学地球環境科学部)、高橋 そよ(琉球大学)、座長:近藤 康久(総合地球環境学研究所)、中村 高志(山梨大学大学院・国際流域環境研究センター)、高橋 そよ(琉球大学)、安原 正也(立正大学地球環境科学部)

16:00 〜 16:15

[HCG25-03] マハウェリ川中流域における未確認貯水池の検出

*鈴木 慎也1 (1.独立行政法人 国立高等専門学校機構 東京工業高等専門学校)

キーワード:スリランカ、連珠ため池システム、乾燥地域、GIS、DTM

スリランカは熱帯性モンスーン気候に属し,このうち島の北半分を占める乾燥地帯では,年間降水量の約7割が雨季に集中している.そのため天水だけでは乾季の耕作が困難であったことから,古代から多くの貯水池や水路が築造されてきた.これらを基盤とした連珠ため池システムは,上流からの排水を下流で用水として反復利用することを可能とした画期的なものであった。この貯水灌漑システムによって、乾燥地帯は千年以上にわたって一大穀倉地帯として繁栄を極めたが、13世紀に原因不明の崩壊をむかえる.近年、貯水池の水質浄化作用やその豊かな生態系から,持続可能な灌漑システムとして再評価され、国策として貯水池群の修復・改修が推し進められているが、真の持続可能な灌漑の実現は、崩壊原因の解明なくしてはありえない。
 崩壊原因の解明のためには,まず、貯水池群が放棄された当時の状況を明らかにする必要がある.しかし,現存する貯水池の多くは,19世紀以降のイギリス統治下,及び独立以降の灌漑政策により,修復・改修の手が入っているため,貯水池群が放棄された当時の状況を窺い知ることは困難となっている.このような中で、人の手がほとんど入っていない自然保護区や国立公園内の貯水池群を対象とした調査・研究を行うことは,当時の状況を解明しうる唯一の方法であると言える.
 本研究では高精度数値地形モデル (DTM:Digital Terrain Model)を用いて作成した微地形図からマハウェリ川中流域の未確認貯水池の検出を試みた。分析の結果,マハウェリ川中流域において,新たに100を超える貯水池候補地が検出された。本研究によって,これまで他地域と比べ貯水池の分布密度が極端に低かったマハウェリ川中流域に、未確認の貯水池が多数存在していることが示唆されたことで、これまで不明瞭であった対象地域の当時の開発状況の一端が明らかとなった。

謝辞: 本研究はクリタ水・環境科学振興財団2021年度国内研究助成金を受けて実施した。