日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG25] 文化水文学

2023年5月25日(木) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (6) (オンラインポスター)

コンビーナ:中村 高志(山梨大学大学院・国際流域環境研究センター)、近藤 康久(総合地球環境学研究所)、安原 正也(立正大学地球環境科学部)、高橋 そよ(琉球大学)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/24 17:15-18:45)

13:45 〜 15:15

[HCG25-P01] 内陸製塩ー日本列島の山間部に湧出する塩泉の分布,性状,起源とその歴史的な利用ー

*安原 正也1 (1.立正大学地球環境科学部)

キーワード:塩泉、内陸製塩、化石海水、スラブ起源水、同位体

交通・交易網が未発達であった古代の日本では,内陸部においては海塩の入手は難しく,このため山間部に自然湧出する塩水は極めて貴重な資源であった.塩水がわき出る湧水あるいは井戸は地域で大切に保護され,得られた塩水は製塩,煮炊き,種子の選別,あく抜き,飲用,湯治等,多様な自的のために利用されてきた.この様な湧水や井戸(すなわち,内陸塩泉)を民俗関係の文献(たとえば,平島,1973;亀井,1976;日本塩業大系編集委員会,1977;鹿山,1983),さらには全国の市町村史,地方の郷土資料に基づいて抽出した.その結果,現在は塩水の湧出が止まってしまったものも含め,全国の約160地点において内陸塩泉の存在が確認された.なお,井戸の場合,深さは数m以内であった.今回はこれらの中から,塩分濃度の濃い塩泉を利用して古くから内陸製塩(山塩生産)が行われてきた山形県小野川,福島県会津大塩・塩沢,長野県鹿塩,山梨県奈良田等をとりあげ,当時の製塩法や製塩量,山塩の流通経路ついて紹介する.
併せて,我が国の内陸塩泉の起源について水文学的な検討を行った結果を紹介する.イギリスのチェシャー,ドイツのリューネブルクやハレ,アメリカ合衆国のオノンダガ,中国の四川等,古くから製塩に利用されてきた外国の著名な塩泉は多くの場合地下に存在する岩塩層と関係するが,変動帯にある日本ではこのような岩塩層が地下に存在する可能性は極めて低い.このため,過去には内陸塩泉の起源を地層堆積時に取り込まれた古海水(化石海水)に求めることが多かった.しかし近年の各種同位体に基づく詳細な研究により,スラブ起源水(有馬型熱水)がその起源と考えられる塩泉が日本列島の前弧域において多数確認されている.当日は,以上のような塩泉の分布,性状,起源とその歴史的な利用について話題提供したい.