日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS06] 津波とその予測

2023年5月23日(火) 10:45 〜 12:00 106 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:室谷 智子(国立科学博物館)、馬場 俊孝(徳島大学大学院産業理工学研究部)、座長:対馬 弘晃(気象庁気象研究所)、室谷 智子(国立科学博物館)

10:45 〜 11:00

[HDS06-11] 日本海の過去の海底地すべり津波の規模推定

*犬井 将尭1鴫原 良典1 (1.防衛大学校システム工学群建設環境工学科)

キーワード:海底地すべり、津波、日本海

日本海では,大小さまざまな海底地すべりおよび崩壊地形が分布している.それらの中には津波を発生させたイベントも存在する可能性が考えられ,沿岸部に重要インフラ施設が点在する我が国の状況を鑑みると,今後,発生する恐れのある海底地すべり津波のハザードを推定する技術を確立ことは,防災対策上非常に重要である.そこで本研究では,日本海の海底地すべり跡のデータを利用することにより,過去に発生した可能性のある海底地すべり津波の規模推定方法の確立を目的とした.

日本海に分布する海底地すべり跡に関する約1,500地点のデータを精査し,縦断面全体が地すべり斜面の原地形の傾斜よりえぐれている約300地点を抽出した.抽出した海底地すべり跡について水深,傾斜角や地すべり幅などのパラメータと,断面形状から推定した地すべり塊の体積から,海面に生じる負の最大津波水位である津波波源振幅をWatts et al.(2005)の経験式に基づき計算し海底地すべり津波の規模推定を行った。海底地すべり津波の発生状況は海域によって異なっており,津波波源振幅が10m超となる大規模な津波イベントは北海道南西沖に集中している一方で,1m超となる中規模なものは広範囲に分布していることを確認した.また,日本海では大陸棚の比較的浅い範囲に海底活断層が分布していることから,地震活動が海底地すべりの発生に影響している可能性がある.今後,本研究の解析で採用したデータを基に確率モデルなどを作成することにより,将来的に発生する恐れのある海底地すべり津波ハザードを推定する手法の構築が期待できる.

謝辞
本研究はJSPS科研費22H01606の助成を受けた.また,本稿の作成にあたっては隈元崇氏(岡山大学)より海底地すべり跡に関するデータを提供していただいた.