日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS06] 津波とその予測

2023年5月23日(火) 10:45 〜 12:00 106 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:室谷 智子(国立科学博物館)、馬場 俊孝(徳島大学大学院産業理工学研究部)、座長:対馬 弘晃(気象庁気象研究所)、室谷 智子(国立科学博物館)

11:15 〜 11:30

[HDS06-13] 津波数値計算における詳細なCFL条件
~その計算精度・速度の検討

*南 雅晃1 (1.気象庁気象研究所)

キーワード:CFL条件、計算安定条件、津波即時予測

防災のためのオペレーションとしての津波リアルタイムシミュレーションを考えた場合、その数値計算の安定性はオペレーションの成否に直結する最重要ファクターである。しかしながら、リアルタイムシミュレーションでは計算速度も同様に重要となっている。また「計算安定性」と「計算速度・計算精度」はトレードオフであることがほとんどである。そこで、計算安定性の基本的条件である、CFL条件について、津波数値計算において、精度を落とさず、計算速度を向上させ、安定して計算出来る条件について検討する。CFL条件とはCourant, R.; Friedrichs, K.; Lewy, H. (1956) [1928]によって示された計算の安定条件で、(1)のように表される。津波計算では(2)として用いられることが多い(例えば、地震調査研究推進本部、波源断層を特性化した津波の予測手法)。しかしながら、Mellor, G. L., (2004) の海洋モデル(以下POMと呼称する)では、(3)の条件が示されている。そこで本稿では、格子間隔Δx,Δy、積分時間間隔Δtを様々に変化させて多数の事例を計算し、その計算が安定する最大のΔtを求めることで、安定して計算出来る最大のクーラン数を求めた。その結果がFig. 1の通りで、その条件は、POMの条件と一致した。これらは、波高を計算する格子間隔、流束を計算する格子間隔のうち、最も短い長さを幾何学的に求めることでその条件が求めることが出来ることが分かった。本稿ではさらに、これらの条件を球面座標系(津波計算で良く用いられる、緯度経度を用いた座標系)でも適用するために、(4)の条件を用いた。これらの条件は各メッシュごとにその条件を確認する必要があるが、事前に1回だけ計算すれば良くその計算負荷は殆どない。太平洋全域で30秒格子(Fig. 2の範囲)で、その条件を求めると、最大のΔtは1.31secとなる。これらの計算ではよくΔt=1.00secが用いられている。そこで、JAGURS (Baba et al. 2015)を用い、これらの領域でΔt=1.31secとして、2010年チリ地震津波の計算を行った所、安定した計算が可能で、且つ計算結果もΔt=1.00secとほぼ同じであった。またΔtが1.31倍、積分回数が1/1.31倍になることから、計算時間が約24%が高速化された。