日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS06] 津波とその予測

2023年5月24日(水) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (9) (オンラインポスター)

コンビーナ:室谷 智子(国立科学博物館)、馬場 俊孝(徳島大学大学院産業理工学研究部)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/23 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[HDS06-P13] 気圧波によって発生する海面変動の一次元計算

*三村 達矢1馬場 俊孝2 (1.徳島大学大学院創成科学研究科理工学専攻、2.徳島大学大学院)


キーワード:大気ラム波、トンガ

2022年1月15日13:10分頃(JST)に日本から約8,000km離れたトンガ諸島にあるフンガトンガ・フンガハアパイ火山が大規模噴火を起こした.同噴火に起因すると考えられる津波は日本を含む太平洋全域で観測されたが,日本で津波の到達時刻は通常の津波よりも顕著に早かった.さらに,発生源から約3,000km離れたナウルでの津波が小さかったにも関わらず,環太平洋域では1m以上の津波が観測された.
津波の到着と同じタイミングで,火山から伝播した大気ラム波と見られる微気圧変動が観測されており,この津波は火山性の気象津波と考えられている.
本研究では,大気―海洋結合モデルを用いて気象津波の一次元計算を実施した.線形長波式の外力に大気圧力項を追加し,差分法で解いた.微気圧変動は進行する正弦波で近似した.本研究では,観測データに基づいて気圧波の進行速度は300m/s,最大圧力偏差2hPaとした.
解析では海底の形を「平坦」「一定傾斜」「実地形」と変えて,生成される気象津波の変形を調査した.計算モデルの水平距離は日本とトンガ間の距離とほぼ同じ8,000kmとした.平坦な海底地形では水深を1,000mずつ変更しながら計算を実施した.水深が1,000mから5,000mまでは生成される気象津波の最大津波高は0.02m以下であった.その後,津波高が徐々に大きくなり,水深9,000mでは顕著なプラウドマン共鳴により最大波高は0.75mと大きくなった.一定傾斜の海底地形の計算においては傾斜10度,最大水深10,000mの上り坂と傾斜10度最大水深11,000mの下り坂の計算を行なった.上り坂では大気ラム波によって強制波が励起されたが,水深が浅くなるにつれラム波の速度に津波がついていけず自由波となり,新たな強制波が発生した.一方,下り坂では水深が深くなるにつれ励起される強制波が増大した.
一次元ながら日本とトンガ間の実地形を用いた解析では,複雑な地形により強制波が生成し,それが伝播速度のずれにより自由波となり,新たな強制波を生み出すという現象が繰り返し発生し,非常に複雑な海面変動が励起された.通常の地震性津波の励起とは違い,気圧波が伝播しながら計算領域全域において新たな津波を励起し続けるという現象が確認できた.2022年トンガ津波の継続時間は非常に長かったが,このような気象津波独特の津波励起が関連していると思われる.なお,より正確な予測には一次元計算ではなく二次元計算を行なう必要があり,これを次の課題として取り込む予定である.