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[HDS06-P15] 5海域を統合した確率論的津波ハザード評価:確率設定方法とハザード評価結果について
キーワード:確率論的津波ハザード評価 、南海トラフ、千島海溝、日本海溝、相模トラフ、南西諸島海溝
日本周辺を取り巻く海域では、プレートの沈み込みに伴う巨大地震が発生することにより津波の発生が繰り返されてきた。地震調査研究推進本部地震調査委員会(以下、地震本部と呼ぶ)は、こうした地震を海溝型地震と定義し、地震が発生する領域や規模、確率等を長期評価として公表している。具体的には、千島海溝沿い、日本海溝沿い、相模トラフ沿い、南海トラフ沿い及び南西諸島海溝沿いなど、それぞれの海域の地震活動に対する長期評価である。また、地震本部は長期評価に基づく確率論的な津波ハザード評価として「南海トラフ沿いで発生する大地震の確率論的津波評価」を公表している。 この津波評価では、最大クラスの地震を除く、M8クラスからM9までの地震規模のプレート間地震を対象に、海岸における津波ハザードを確率論的手法によって評価している。また、土肥他(2022)は各海域の長期評価に基づき、千島海溝沿い、日本海溝沿い、相模トラフ沿い、南海トラフ沿いで発生する地震の発生確率をそれぞれ評価し、それらを統合した確率論的津波ハザード評価を実施した。
本発表では、千島海溝、日本海溝、相模トラフ、南海トラフ、および南西諸島の各沈み込み帯のプレート間地震及びプレート内地震のうち、地震本部によって次の地震の発生場所、発生規模、発生確率が評価された地震によって生じる津波の確率論的ハザード評価(平田他、本大会)の発生確率の設定手順について主に説明する。なお、長期評価された地震の地震規模および断層位置・形状に不確かさ(あるいは多様性)が存在しうる場合、これを、異なる地震規模および異なる断層位置・形状から構成される、ある地震のグループとして取り扱う。設定した波源断層モデル群、津波伝播解析については村田他(本大会)を参照されたい。
各海域の確率設定においては、それぞれ「千島海溝沿いの地震活動の長期評価(第三版)」(地震本部、2017)、「日本海溝沿いの地震活動の長期評価」(地震本部、2019)、「相模トラフ沿いの地震活動の長期評価(第二版)、(地震本部、2014)、「南海トラフの地震活動の長期評価(第二版)」(地震本部、2013)、「日向灘および南西諸島海溝周辺の地震活動の長期評価について」(地震本部、2004)を参照し、地震規模や平均発生間隔が言及されており、かつ地震規模から想定される津波による影響が小さくないと考えられる地震群を対象とした。ある特定の地震の地震規模が幅を持って評価されている場合(例えば、根室沖のプレート間巨大地震はM7.8-8.5程度と長期評価)、地震規模と発生頻度がb=0.9(日本平均、参考文献引用)のGR則に従うと考え、当該地震として設定された波源断層モデル群に対して確率を分配した。一方、長期評価によって発生確率および平均発生間隔、地震後経過時間、BPT分布のばらつきの値が評価されている地震については、BPT分布に基づく更新過程によって30年発生確率(2022年1月1日時点)を求めた。その他の地震は、定常ポアソン過程に従って地震が発生すると仮定した。
一例として、千島海溝で長期評価されている超巨大地震(17世紀型)では、地震規模はMw8.6~9.2の範囲において波源断層モデルを設定し、30年発生確率はBPT分布に基づき算出された13.0%を使用した。なお、超巨大地震(17世紀型)の発生領域において、地震規模が等しく、位置や形状が異なる震源域が複数設定されている場合、その地震規模に割り当てられた地震の発生確率を各震源域に対して均等に分配した。同様に、一つの震源域にすべり分布の位置が異なる波源断層モデルが複数設定されている場合、その震源域に割り当てられた地震の発生確率を各波源断層モデルに均等に分配した。得られたハザードカーブを統合する方法は原則として、各海域は互いに独立事象、ある海域における地震グループは互いに独立事象、ある地震グループにおける震源域は互いに独立事象、ある震源域における波源断層モデルは互いに排反事象として、ハザードカーブの統合を実施した。
試算で得られた30年超過確率分布を概観すると、海岸で3mを超える確率が最大で60%を超える地点が見られ、日本列島の太平洋岸の広範囲で10%以上となった。本研究は防災科学技術研究所の研究プロジェクト「ハザード・リスク評価に関する研究」の一環として実施した。
本発表では、千島海溝、日本海溝、相模トラフ、南海トラフ、および南西諸島の各沈み込み帯のプレート間地震及びプレート内地震のうち、地震本部によって次の地震の発生場所、発生規模、発生確率が評価された地震によって生じる津波の確率論的ハザード評価(平田他、本大会)の発生確率の設定手順について主に説明する。なお、長期評価された地震の地震規模および断層位置・形状に不確かさ(あるいは多様性)が存在しうる場合、これを、異なる地震規模および異なる断層位置・形状から構成される、ある地震のグループとして取り扱う。設定した波源断層モデル群、津波伝播解析については村田他(本大会)を参照されたい。
各海域の確率設定においては、それぞれ「千島海溝沿いの地震活動の長期評価(第三版)」(地震本部、2017)、「日本海溝沿いの地震活動の長期評価」(地震本部、2019)、「相模トラフ沿いの地震活動の長期評価(第二版)、(地震本部、2014)、「南海トラフの地震活動の長期評価(第二版)」(地震本部、2013)、「日向灘および南西諸島海溝周辺の地震活動の長期評価について」(地震本部、2004)を参照し、地震規模や平均発生間隔が言及されており、かつ地震規模から想定される津波による影響が小さくないと考えられる地震群を対象とした。ある特定の地震の地震規模が幅を持って評価されている場合(例えば、根室沖のプレート間巨大地震はM7.8-8.5程度と長期評価)、地震規模と発生頻度がb=0.9(日本平均、参考文献引用)のGR則に従うと考え、当該地震として設定された波源断層モデル群に対して確率を分配した。一方、長期評価によって発生確率および平均発生間隔、地震後経過時間、BPT分布のばらつきの値が評価されている地震については、BPT分布に基づく更新過程によって30年発生確率(2022年1月1日時点)を求めた。その他の地震は、定常ポアソン過程に従って地震が発生すると仮定した。
一例として、千島海溝で長期評価されている超巨大地震(17世紀型)では、地震規模はMw8.6~9.2の範囲において波源断層モデルを設定し、30年発生確率はBPT分布に基づき算出された13.0%を使用した。なお、超巨大地震(17世紀型)の発生領域において、地震規模が等しく、位置や形状が異なる震源域が複数設定されている場合、その地震規模に割り当てられた地震の発生確率を各震源域に対して均等に分配した。同様に、一つの震源域にすべり分布の位置が異なる波源断層モデルが複数設定されている場合、その震源域に割り当てられた地震の発生確率を各波源断層モデルに均等に分配した。得られたハザードカーブを統合する方法は原則として、各海域は互いに独立事象、ある海域における地震グループは互いに独立事象、ある地震グループにおける震源域は互いに独立事象、ある震源域における波源断層モデルは互いに排反事象として、ハザードカーブの統合を実施した。
試算で得られた30年超過確率分布を概観すると、海岸で3mを超える確率が最大で60%を超える地点が見られ、日本列島の太平洋岸の広範囲で10%以上となった。本研究は防災科学技術研究所の研究プロジェクト「ハザード・リスク評価に関する研究」の一環として実施した。