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[HDS10-04] 令和2(2020)年7月豪雨で発生した熊本県芦北地区でのランドスライドの地形地質素因
キーワード:豪雨、熊本、付加体、古風化
令和2(2020)年7月豪雨は日本列島の各地で災害を発生させた.ここではそのうち熊本県の八代海に面する芦北地区の付加体で生じた崩壊を概観し,その地形地質素因について検討する.調査資料は佐敷川流域の4箇所(牛淵,宮浦,八幡,採石場上)と海岸に近い福浜の崩壊から得られた.いずれも深さ10 m内外,体積104 m3オーダーの崩壊である.崩壊の基岩となっているのは,いずれもジュラ紀の付加体である秩父帯の砂岩,泥岩である.これらの崩壊に共通しているのは岩盤の風化が強いことである.発生域の南方には鮮新世-更新世にかけての肥薩火山岩類が分布する.これは陸上での火山活動によるものであったから,その下位に分布する秩父帯の岩石はこの時期から地表近くに位置し,風化作用を受ける環境にあったと推定される.肥薩火山岩類の分布は,削剥によって現在狭められているが,もともとは今回の発生域近くまで分布していたであろう.福浜の崩壊では堆積物中に安山岩礫が含まれており,頂部には火山岩が分布していることがわかっている.そのほかの崩壊地も,不整合面から100 m程度までの位置にあるので,十分に古風化を受ける位置にある.一般的に,長期にわたる風化作用は崩壊の主要な素因となりうる.