日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GG 地理学

[H-GG01] 自然資源・環境に関する地球科学と社会科学の対話

2023年5月22日(月) 09:00 〜 10:15 201A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:大月 義徳(東北大学大学院理学研究科地学専攻環境地理学講座)、上田 元(一橋大学・大学院社会学研究科)、古市 剛久(森林総合研究所)、佐々木 達(法政大学)、座長:大月 義徳(東北大学大学院理学研究科地学専攻環境地理学講座)、上田 元(一橋大学・大学院社会学研究科)

09:30 〜 09:45

[HGG01-03] インド北西部の都市隣接沿岸部マングローブ林におけるゴミ堆積の生態系機能に与える影響について

*閏間 花梨1大手 信人1 (1.京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻)


キーワード:マングローブ林、生態系、ゴミの堆積、汚染

熱帯・亜熱帯の潮間帯・汽水域に成立するマングローブ林は豊かな生態系を形成する.マングローブ生態系は炭素貯留や海水の浄化,防災など様々な機能を有するため,社会的な重要性が世界的に指摘されている.しかしながら,海岸地域の開発に伴う伐採や水環境の汚染などの人間活動や気候変動の影響により,マングローブ林の面積は年々減少傾向にある.また,人口が集中する地域では,ここ数十年で陸域から河川や排水路を通じてマングローブ林に堆積するゴミが急増しており,種々の悪影響が懸念されている.調査地であるインド北西部ムンバイ県のVersova地区(以降Versova)はメガシティであるムンバイの近郊に位置するため,河川や排水路を通じてマングローブ林周辺に堆積するゴミの量が増加している.Versova では,2000年代以降,河川やマングローブ林床におけるゴミの堆積量が増加したことで,マングローブ林床を棲息域としていた魚介類の数が激減した.この地域は16世紀頃からある漁村で主にマングローブ林周辺で漁業を行っていたが,漁業資源の減少に伴い漁業が続けられず生活に困窮している漁民も少なくない.現状ではゴミの堆積が水産資源や漁民の生業に与える影響に関する調査例はあるが,マングローブ林の生態系機能に与える影響に関しては十分に明らかにされているとは言えない.しかし,今後ゴミ汚染の堆積やそれによる土壌や水の汚染のマングローブ植物への悪影響が顕在化する可能性を指摘する研究,例えば,堆積したゴミが苗木の着床を阻害することを明らかにした先行研究がある.しかし,既往の研究では,マングローブ林に堆積するゴミの種類や量,分布についての調査にとどまり,ゴミの堆積がマングローブ林に直接与える影響に着目した調査例は少ない.本研究ではゴミの堆積とそれによる土壌や水の汚染がマングローブ林の生息環境に与える影響を明らかにすることを目的として,次の3項目を調査する.(1)マングローブ林の毎木調査や微地形調査.(2)水質や土質の調査.(3)漁民への聞き取り調査や魚介類のサンプリング調査.調査はVersovaの乾季と雨季に行い,本発表では乾季の結果について発表する.本研究で得られた知識・情報は具体的かつ有効性の高い環境保全施策を考え実施する上で活用できると考えられる.