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[HGM02-P02] UAV-LiDARデータと既存の航空LiDARデータを活用した水路頭の移動の検討 ―2018年7月西日本豪雨の事例―
キーワード:土砂災害、表層崩壊、集水面積
水路頭は山地の谷に存在する水路の最上流端であり,水路頭の上流には谷頭凹地が存在する.水路頭は谷頭凹地における表層崩壊によって上流側へ移動するが,崩壊から数百年程度経過すると,下流側に移動することが推定されており,水路頭の移動について理解することは,山地の地形発達の解明だけでなく,表層崩壊の予測につながる可能性がある.水路頭の移動を理解するためには,複数の時期に水路頭の位置を観測する必要がある.水路頭の判読には山地にある水路を判読できる解像度の地形データが必要である.近年のUAV-LiDARの普及により,立ち入り困難な場所において高密度な点群データを取得できるようになり,データの入手が制約されている場合でも複数時期のデータを比較できるようになった.本研究では,UAV-LiDARデータと過去に取得された航空LiDARデータを用いて2018年7月豪雨前後における水路頭の位置変化を解析した.対象地域は広島県の絵下山周辺の花崗岩地域であり,2018年7月豪雨の際に多くの表層崩壊が発生した.まず,2009年に取得された解像度1 mのDEMから作成した傾斜量図と等高線に基づき,豪雨前の水路頭を判読した.次に,2022年11月に取得したUAV-LiDARにより得られた解像度1 m,0.5 mのDEMに基づき傾斜量図,等高線を作成し,豪雨後の水路頭を判読した. 2009年時点で,計測対象範囲にある水路頭は33個であった.33個のうち,上流側で表層崩壊が発生した水路頭は7個あり,これらの谷では崩壊に伴い水路頭が豪雨前の位置より上流側へ移動した.豪雨前から存在していた水路頭について,豪雨後にその集水域内で崩壊が発生したもの(崩壊発生)と,崩壊しなかったもの(崩壊非発生)に分類し,地形的特徴を分析した.その結果,崩壊非発生の水路頭では,崩壊発生の水路頭に比べて,集水面積が小さい傾向があった.集水面積が小さい水路頭では表層崩壊の発生の確率が小さいことが推測される.