15:30 〜 17:00
[HGM02-P08] 下方侵食を制限した岩盤流路の室内モデル実験
キーワード:岩盤河川、下方侵食、側方侵食、室内モデル実験
ほとんどの部分で岩盤河床を持つ山地河川は,山地の景観,特に峡谷やその周辺の起伏などを特徴づける主要素である.山地の多くは現在も隆起している場所であるが,地形発達過程における河川侵食の役割を考える際,隆起への直接的な応答である下刻(下方侵食)と,流路の蛇行や谷幅の拡張などを引き起こす側刻(側方侵食)はそれぞれ景観に与える効果が異なっている.河岸段丘の発達過程に対する従来の説明は,ベースレベル低下のフェイズで下刻が進み新たな段丘崖が作られ,ベースレベルが安定したフェイズで側刻により段丘面が作られるとされる.流域スケール(複数の源流と1つの河口を持つ河川地形の最大の単位もしくは階層)の室内モデル実験による先行研究でも,tectonic steadyに達してから流路の側方移動が活発化することが指摘されている.しかし,河床侵食を伴う混相(流体-固体)ダイナミクスは,流れだけの流体力学と異なり不明な点が多く,下刻と側刻がどの程度相補的な関係にあるのかは十分に明らかにされていない.本研究ではこの問題に対し,流路スケール(reach scale:単一流路)の室内モデル実験を用い,模擬岩盤河川における下方侵食と側方侵食の関係性の評価を試みた.基盤に一定の深さで下刻を人為的(強制的)に制限するために木製の板を導入し,地表面には人工的に直線状の初期流路を形成して上流端から給水した.一定時間ごとに写真測量を用いて地形をデジタル化し,下刻・側刻量を測定した.その結果,下方侵食制限前(下刻が板に到達する前)に比べ,制限後に側方侵食が活発化した.少なくとも本研究の条件下では,下刻の低下に伴って側刻が増大し,相補的な関係性が示された.