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[HQR03-04] 茨城県那珂台地のMIS 5c-e海成段丘堆積物の光ルミネッセンス年代測定
キーワード:光ルミネッセンス年代測定法、pIRIR法、海成段丘構成層、Marine Isotope Stage 5、鬼界葛原テフラ
はじめに
光ルミネッセンス(OSL)年代測定法は,石英とカリ長石が太陽光への曝露後に埋没して以降の被曝量(等価線量)をOSL信号から見積もり,それを地中での自然放射線量(年間線量率)で除して堆積物の堆積年代を求める手法である.カリ長石は,OSL年代測定法により過去数十万年前まで年代測定できるが,OSL信号の自然減衰(フェーディング)による年代値の若返りが問題となる.この問題を解決するため,pIRIR法が新たなOSL年代測定法として開発された.しかしながら,pIRIR法は国内での適用事例が少なく,年代値の信頼性の検証が必要な手法である.本研究では,pIRIR法(pIR200IR290法)を茨城県那珂台地の年代既知の海成段丘構成層と風成砂層で実施し,整合する年代値が得られるか検証した.
試料採取
試料採取は,MIS 5cからMIS 5eに形成された那珂台地面(鈴木1989)に位置する,K-Tz露頭とIC露頭の2箇所で実施した.
K-Tz露頭では,鬼界葛原テフラ(K-Tz;約95 ka)がパッチ状に確認できる,層厚約50 cmの海成段丘構成層の砂層がある.試料はK-Tz層準より15 cm下位で,塩ビ管を打ち込んで採取した.
IC露頭では,基底に層厚約110 cmの海成段丘構成層の砂層があり,それが層厚約80 cmの風成砂層に覆われる.この風成砂層は,約44 kaの赤城鹿沼テフラを挟む層厚約1.8 mのローム層に覆われる.試料は海成段丘構成層の最上部の前浜-後浜の砂層と,それを覆う風成砂層で塩ビ管を打ち込んで採取した.
試料処理とOSL年代測定
試料処理は暗室内(オレンジ光照明下)で実施し,180-250 µmで比重2.53~2.58 g/cm3のカリ長石に富む鉱物を抽出した.
抽出した鉱物は試料台(直径10 mm)中央の直径2 mmの範囲にシリコンオイルで固定し,Riso TL/OSL Reader DA-20でpIR200IR290法を実施して等価線量を求めた.試料の年間線量率は放射性元素濃度と含水比からDose Rate and Age Calculator(Durcon et al. 2015)で算出した.OSL信号の減衰率(g2days 値)は,フェーディングテストの測定結果をR PackageのLuminescence(Kreutzer et al., 2012)で計算した.
結果
年代値は全てフェーディング未補正のものを示す.
K-Tz露頭は年代値が100.3±8.0 kaで,g2days値が1.47±0.33 %/decadeであった.IC露頭の年代値は,前浜-後浜の砂層で122.5±12.5 ka,風成砂層で94.3±9.0 kaであった.g2days値は前浜-後浜の砂層で1.58±0.40 %/decade,風成砂層で1.22±0.37 %/decadeであった.
考察
K-Tz露頭では,フェーディング未補正でテフラ年代と整合する年代値が得られた.また,g2days 値は全てフェーディング補正の必要がないと推察されている値(Buylaert et al., 2012) の範囲に収まった.このため,pIR200IR290法はフェーディングしないOSL信号が得られる手法だと推察される.
海成段丘構成層で得られた年代値は,鈴木(1989)が報告した那珂台地面の形成年代と整合した.このため,pIR200IR290法は,MIS 5cからMIS 5eの海成段丘構成層の砂層で整合的な年代値が得られる手法だと推察される.
IC露頭では,MIS 5eに前浜-後浜環境で砂が堆積し,それがMIS 5cに風成砂で覆われたと推察できる.pIR200IR290法は,積み重なる砂質堆積物がMIS 5cとMIS 5eのどちらで堆積したか識別可能な手法だと推察される.
光ルミネッセンス(OSL)年代測定法は,石英とカリ長石が太陽光への曝露後に埋没して以降の被曝量(等価線量)をOSL信号から見積もり,それを地中での自然放射線量(年間線量率)で除して堆積物の堆積年代を求める手法である.カリ長石は,OSL年代測定法により過去数十万年前まで年代測定できるが,OSL信号の自然減衰(フェーディング)による年代値の若返りが問題となる.この問題を解決するため,pIRIR法が新たなOSL年代測定法として開発された.しかしながら,pIRIR法は国内での適用事例が少なく,年代値の信頼性の検証が必要な手法である.本研究では,pIRIR法(pIR200IR290法)を茨城県那珂台地の年代既知の海成段丘構成層と風成砂層で実施し,整合する年代値が得られるか検証した.
試料採取
試料採取は,MIS 5cからMIS 5eに形成された那珂台地面(鈴木1989)に位置する,K-Tz露頭とIC露頭の2箇所で実施した.
K-Tz露頭では,鬼界葛原テフラ(K-Tz;約95 ka)がパッチ状に確認できる,層厚約50 cmの海成段丘構成層の砂層がある.試料はK-Tz層準より15 cm下位で,塩ビ管を打ち込んで採取した.
IC露頭では,基底に層厚約110 cmの海成段丘構成層の砂層があり,それが層厚約80 cmの風成砂層に覆われる.この風成砂層は,約44 kaの赤城鹿沼テフラを挟む層厚約1.8 mのローム層に覆われる.試料は海成段丘構成層の最上部の前浜-後浜の砂層と,それを覆う風成砂層で塩ビ管を打ち込んで採取した.
試料処理とOSL年代測定
試料処理は暗室内(オレンジ光照明下)で実施し,180-250 µmで比重2.53~2.58 g/cm3のカリ長石に富む鉱物を抽出した.
抽出した鉱物は試料台(直径10 mm)中央の直径2 mmの範囲にシリコンオイルで固定し,Riso TL/OSL Reader DA-20でpIR200IR290法を実施して等価線量を求めた.試料の年間線量率は放射性元素濃度と含水比からDose Rate and Age Calculator(Durcon et al. 2015)で算出した.OSL信号の減衰率(g2days 値)は,フェーディングテストの測定結果をR PackageのLuminescence(Kreutzer et al., 2012)で計算した.
結果
年代値は全てフェーディング未補正のものを示す.
K-Tz露頭は年代値が100.3±8.0 kaで,g2days値が1.47±0.33 %/decadeであった.IC露頭の年代値は,前浜-後浜の砂層で122.5±12.5 ka,風成砂層で94.3±9.0 kaであった.g2days値は前浜-後浜の砂層で1.58±0.40 %/decade,風成砂層で1.22±0.37 %/decadeであった.
考察
K-Tz露頭では,フェーディング未補正でテフラ年代と整合する年代値が得られた.また,g2days 値は全てフェーディング補正の必要がないと推察されている値(Buylaert et al., 2012) の範囲に収まった.このため,pIR200IR290法はフェーディングしないOSL信号が得られる手法だと推察される.
海成段丘構成層で得られた年代値は,鈴木(1989)が報告した那珂台地面の形成年代と整合した.このため,pIR200IR290法は,MIS 5cからMIS 5eの海成段丘構成層の砂層で整合的な年代値が得られる手法だと推察される.
IC露頭では,MIS 5eに前浜-後浜環境で砂が堆積し,それがMIS 5cに風成砂で覆われたと推察できる.pIR200IR290法は,積み重なる砂質堆積物がMIS 5cとMIS 5eのどちらで堆積したか識別可能な手法だと推察される.