[H-QR03] 第四紀：ヒトと環境系の時系列ダイナミクス

[HQR03-10] ITRAXを用いたカマン・カレホユック遺跡ピット充填堆積物の連続分析：　人間活動と技術進化史の高解像度復元に向けて

*多田 隆治¹、多田 賢弘¹、鈴木 健太¹、佐竹 渉¹、香月 興太²、Şahin Seren⁴、松村 公仁³、Arikan Bülent⁴、大村 幸弘³、松井 孝典¹ (1.千葉工業大学地球学研究センター、2.島根大学エスチュアリーセンター、3.アナトリア考古学研究所、4.イスタンブール工科大学)

キーワード：ミドン、人間活動、技術進化、カマン・カレホユック、ITRAX、高解像度復元

遺跡内のピットを充填するゴミ堆積物(midden)は、考古学において、当時の人間活動を推定する目的で研究されてきた。しかしその対象は、ゴミ堆積物中から出土した貝殻や遺物などであり、堆積物そのものは注目されて来なかった。また、その年代は、ピットが属する文化層や建築層（文化層より一段下の層序単位）の編年に基づいていて、1文化層（あるいは建築層）内の細かな編年は行われて来なかった。
例えば中央アナトリアのカマン・カレホユック遺跡では、文化層は平均で1000年前後の期間に、建築層は平均で100年前後の期間に対応する。カマン・カレホユックにおけるピットは、直径1m前後、深さ1m弱のものが多く、元々穀物貯蔵庫として使われたものが、後にゴミ捨て場となっている。
我々は、カマン・カレホユック遺跡北部トレンチ下部に露出するおよそ4200年前の火災層とその一つ下位の火災層の間の約２ｍの層序区間について、ピット充填物の層序を復元した（多田賢弘・他　本セッション）。その結果、計17層準で形成されたピットが識別され、ピット充填堆積物の層序が復元された。ピット充填堆積物の層厚の合計は８.5mに及び、文化層の堆積速度の4倍以上の速度を持つことになる。従って、その堆積記録を連続的に回収し、それを高解像度で連続的に分析することで、当時の生活環境や金属加工、土器製作などの技術、それらの時代変遷を高時間解像度で辿ることが出来ると期待される。
そこで、復元されたピット充填堆積物の層序に基づいて層理に垂直に5x5x50㎝の柱状試料を切り出し、そのうちの1つについて、XRF core scanner（ITRAX）を用いて1mm刻みで分析を行ない、柱状試料の高解像度画像と比較した。また、その柱状試料を構成する特徴的な層のいくつかについて柱状試料の隣から試料を採取し、波長分散型XRFおよびXRDで分析を行なって各層の構成物質を特定してITRAXの分析結果と比較した。
発表では、ITRAX分析によって当時の人々の生活や技術について、どの様な情報を抽出できそうかについて報告する。