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[HRE11-P09] 高知県梼原町における天然Magnesium silicate hydrate(M-S-H)を基質とする含蛇紋岩礫岩露頭の発見
キーワード:マグネシウムシリケート水和物、含蛇紋岩礫岩、蛇紋岩
【意義】Magnesium silicate hydrate(以下;M-S-H)は地下貯留層へのCO2貯蔵や地下処分場での放射性廃棄物の処分に重要な条件で生成する可能性があるため,近年,関心が高まっているセメント物質である(Nied et al., 2016など).そのため,合成M-S-H形成実験についての報告が複数なされている(例えば;Brew and Glasser., 2005; Nied et al., 2016).天然礫岩でのM-S-Hの報告は,ノルウェーの超塩基性岩地域での氷河堆積物による礫岩のみである(Ruiter and Austrheim., 2018).また,加藤ほか(2021)では,北海道神居古潭帯において,含蛇紋岩礫岩の基質の一部がデュエライト(結晶性の悪いタルクと蛇紋石が比較的粗く混ざったもの)であると報告している.
【目的】四国西部での天然M-S-Hを基質に持つ礫岩の新露頭発見の報告および付加体でのM-S-H礫岩形成過程に関して地質学的に制約することを目的とする.
【地形地質概説】対象地域は高知県梼原町越知面地域である.四国カルストの南側山麓に位置し,一部カルストからの河川系(太田戸川,永野川)が発達している地域である.本地域は北部秩父帯に該当する.本地域における蛇紋岩体は,大野ヶ原ユニット(ペルム紀付加体)の南限境界付近,四万川ユニット(トリアス紀変成岩類)の中央部,そして白亜紀堆積岩類の縁辺に位置する.
【結果】本研究において,天然M-S-Hを基質とする含蛇紋岩礫岩露頭を6露頭発見された.すべての露頭において蛇紋岩を不整合に覆う産状を示しており,露頭は蛇紋岩分布域にのみに分布する.鏡下観察および組成像では,M-S-H基質中に石英や長石が砕屑物として含まれていることを確認し,それらが融解した様子が観察された.EPMAを用いたM-S-H基質の化学組成分析結果では,主にSiO2とMgOで構成されており,一部微量のAl2O3,FeO,MnOを含むことを確認した.また,M-S-H基質部のSi/Mg比の平均値は1.265,中央値が1.137であった.XRD分析では,礫岩からM-S-H基質をできるだけ不純物が無いように分離し,それを不定方位試料として分析を行った.主要なピークは,石英,長石類,蛇紋石類,白雲母,イライトであった.さらに,ブロードしたハローパターンがみられることも確認した.四国カルストと本調査地域で取水を行い,pH計,EC計,ICP_OESにより予察的な水質分析を行った.その結果,不整合露頭付近の流量が少ない取水点で,周囲より比較的高いpH値および高Mg値を確認した.
【考察】これらを踏まえて,Ruiter and Austrheim (2018)などを参考に現段階の本礫岩形成モデルを考察する.本地域の地形形成後,後背域の地質体からSi成分の供給,そして蛇紋岩からMg成分が供給される環境下の河川域で,崖錐堆積物が蛇紋岩上に堆積した.その後,蒸発などによる水の減少により,Mg成分が濃縮し,高Mg / 高pH環境が形成される.その高Mg / 高pH環境で崖錐堆積物中の石英や長石などが融解し,Si成分の供給が加速する.このSi成分と蛇紋岩からのMg成分によりM-S-Hが形成され,礫岩化が促進されたと考えられる.
このようなM-S-Hを基質とする礫岩については,未固結の崖錐堆積物を含め,蛇紋岩地域で幅広く観察さされる可能性が高い.そのためM-S-H形成のプロセス解明のため,さらなる露頭分布の把握を進めたい.
【目的】四国西部での天然M-S-Hを基質に持つ礫岩の新露頭発見の報告および付加体でのM-S-H礫岩形成過程に関して地質学的に制約することを目的とする.
【地形地質概説】対象地域は高知県梼原町越知面地域である.四国カルストの南側山麓に位置し,一部カルストからの河川系(太田戸川,永野川)が発達している地域である.本地域は北部秩父帯に該当する.本地域における蛇紋岩体は,大野ヶ原ユニット(ペルム紀付加体)の南限境界付近,四万川ユニット(トリアス紀変成岩類)の中央部,そして白亜紀堆積岩類の縁辺に位置する.
【結果】本研究において,天然M-S-Hを基質とする含蛇紋岩礫岩露頭を6露頭発見された.すべての露頭において蛇紋岩を不整合に覆う産状を示しており,露頭は蛇紋岩分布域にのみに分布する.鏡下観察および組成像では,M-S-H基質中に石英や長石が砕屑物として含まれていることを確認し,それらが融解した様子が観察された.EPMAを用いたM-S-H基質の化学組成分析結果では,主にSiO2とMgOで構成されており,一部微量のAl2O3,FeO,MnOを含むことを確認した.また,M-S-H基質部のSi/Mg比の平均値は1.265,中央値が1.137であった.XRD分析では,礫岩からM-S-H基質をできるだけ不純物が無いように分離し,それを不定方位試料として分析を行った.主要なピークは,石英,長石類,蛇紋石類,白雲母,イライトであった.さらに,ブロードしたハローパターンがみられることも確認した.四国カルストと本調査地域で取水を行い,pH計,EC計,ICP_OESにより予察的な水質分析を行った.その結果,不整合露頭付近の流量が少ない取水点で,周囲より比較的高いpH値および高Mg値を確認した.
【考察】これらを踏まえて,Ruiter and Austrheim (2018)などを参考に現段階の本礫岩形成モデルを考察する.本地域の地形形成後,後背域の地質体からSi成分の供給,そして蛇紋岩からMg成分が供給される環境下の河川域で,崖錐堆積物が蛇紋岩上に堆積した.その後,蒸発などによる水の減少により,Mg成分が濃縮し,高Mg / 高pH環境が形成される.その高Mg / 高pH環境で崖錐堆積物中の石英や長石などが融解し,Si成分の供給が加速する.このSi成分と蛇紋岩からのMg成分によりM-S-Hが形成され,礫岩化が促進されたと考えられる.
このようなM-S-Hを基質とする礫岩については,未固結の崖錐堆積物を含め,蛇紋岩地域で幅広く観察さされる可能性が高い.そのためM-S-H形成のプロセス解明のため,さらなる露頭分布の把握を進めたい.