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[HSC04-05] CO2ハイドレート生成熱を利用したメタンハイドレート増進回収シミュレーション
キーワード:二酸化炭素の分離・回収と貯留、メタンハイドレート、CO2ハイドレート、増進回収
メタンハイドレートは日本の排他的経済水域の海底下に豊富に存在しており、国産の天然ガス資源として関心を集めてきた。海底下のメタンハイドレートからメタンガスを算出するための手法としては、海底下に井戸を掘って水を汲み上げて周辺圧力を減圧することでメタンハイドレートを水とメタンガスに分解する減圧法があるが、メタンハイドレートの分解時の吸熱により地層が冷却されることで、生産開始から一定時間後は生産量が減少してしまう問題がある。そこで、地層にCO2を圧入してCO2ハイドレートを生成することで、CO2ハイドレートの生成熱で周辺を加熱して減圧法によるメタンハイドレートの分解を促進する増進回収法が提案されている。CO2ハイドレート貯留とその生成熱によるメタンハイドレートの増進回収法は、効率的なメタンガスの産出と温室効果ガス排出量削減を両立できる可能性があるとして注目されている。本研究では、CO2ハイドレートの生成熱を利用したメタンハイドレートの増進回収法の性能評価、生産効率に作用する要因の調査を目的として、メタンハイドレートの賦存する海底下の地層にCO2を注入したときの挙動予測シミュレーションソフトの開発、およびそれを用いたシミュレーションの実施を行った。まず、メタンガスの状態方程式、エンタルピーモデル、粘性モデル、熱伝導モデルと、メタンハイドレートの分解モデルをシミュレーションソフトGETFLOWSに新たに実装した。次に、砂泥互層におけるCO2ハイドレート生成とメタンハイドレート分解に関するシミュレーションを行った。その結果、CO2の圧入深度の選定においては、CO2をキャップする泥層とCO2ハイドレートのBSRの鉛直距離をなるべく長くして、CO2がハイドレート化する領域を確保することが重要であると示唆された。また、CO2圧入量を増加させるとメタンの生産量を増加できる可能性がある。また、CO2圧入を停止したり、CO2圧入量を減少させたりしても、メタンハイドレートの分解増進効果は一定期間継続するため、その後も地層の減圧やメタンの回収を継続できる可能性が示唆された。その他に、CO2を冷却して圧入することは、CO2圧入レートによってはメタンハイドレートを直接冷却する効果がCO2ハイドレートの生成促進による加温の効果を上回ることがあり、増進回収に効果的でないことが示唆された。