日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT17] 環境リモートセンシング

2023年5月25日(木) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (13) (オンラインポスター)

コンビーナ:齋藤 尚子(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、島崎 彦人(独立行政法人国立高等専門学校機構 木更津工業高等専門学校)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/24 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[HTT17-P01] 広域・高空間分解能の先進光学衛星(ALOS-3)を利用した海岸線・干潟抽出に関する初期評価

*水上 陽誠1、Yessy Arvelyna2、渡部 帆南2、田殿 武雄1 (1.国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構、2.一般財団法人リモート・センシング技術センター)

キーワード:ALOS-3、WISH、Near-Infrared、coastline、tidal flat

2022年度に先進光学衛星(ALOS-3)が打ち上げられ、2011年に運用を終了した陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)の広域・高分解能光学ミッションの後継機として、本格的な観測運用を始める。ALOS-3はALOSの直下観測幅70kmを継承しつつ、ALOS搭載センサであったPRISM及びAVNIR-2を発展させた広域・高分解能光学センサ(wide-swath and high resolution optical imager;WISH)を搭載している。その地上空間分解能(直下)は、PRISM 2.5m、AVNIR-2 10mに対し、0.8m(パンクロマチック)、3.2m(マルチスペクトル)へと向上し、量子化ビット数もALOSでは8ビットに対し、11ビットへ増加する。特にALOS-3のマルチスペクトルの観測波長帯は、AVNIR-2の可視光3バンド(青、緑、赤)と近赤外バンドの4バンドであったのに対し、これら4バンドに、コースタルとレッドエッジの2バンドを加えた計6バンドとなる。
ALOS-3ミッションの主な目的は、①防災・減災、災害発生後の被害状況把握への貢献、②高精度な地理空間情報の整備・更新に貢献であり、広域・高分解能の利点を生かした沿岸域の環境監視や植生域の環境保全への利用・研究等への活用も期待される。
本研究では沿岸域環境保全の観点から、ALOS-3の本格運用に先立って、その観測性能相当にシミュレーション化した衛星画像を用いて、海岸線及び干潟域の抽出の可能性について検討した。
検証の対象エリアは沖縄県恩納村屋嘉田潟原とした。当域は干潮時に干出域が広範囲に明瞭に現れる場所である。このため、潮位の高低による画像解析結果への影響が評価でき、また、過去に当域の現地調査を実施し、保有する底質や水深情報を考察補助として活用できることから、検証サイトとして選定した。
衛星画像はALOS-3搭載WISHと近い観測波長帯域を有するMaxar Technologies社のWorldview(WV)を採用し、複数のマルチスペクトルバンドのうち、光学的特性により陸域と水域の分離に有効な近赤外バンド(Near-InfraRed)のみを大気上端反射率に変換後、WISH地上空間分解能3.2mにリサイズして解析に使用した。
解析処理手順は近赤外バンドの単画像を使い、ISODATA及び大津のそれぞれの手法を、近赤外バンド画像に適用し、算出した閾値から水域境界を定め、Shapeファイルとして出力する。次に出力したShapeファイルと国土数値情報海岸線データとの比較によって評価する。Shapeファイルで表現されるLine間の距離差を求めるが、ここでは距離計測の基準となるBenchmark(BM)を衛星画像上の陸側で視認性が高い地点に定め、その定点と出力結果及び国土数値情報海岸線データまでとの直線距離を計測する。
本解析の結果、まず水域境界のISODATAと大津の両手法に基づく出力結果のBMからの計測距離差は、概ね1-2mで収まっており、手法による大きな相違はみられなかった。次に出力結果(大津手法の結果)と国土数値情報海岸線データの評価は、検証サイトの海岸の特長毎に行い、岩場では10~20mの差異がみられ、砂浜では概ね2~3mで収まっているものの、5~6mの差異が確認できる箇所もあった。港護岸部では1m未満に収まっているものの、漁港付近では約9mの差異がみられる箇所もあった。河口域では、概ね2~3mに収まっているが、場所によっては15mの特異な差が確認された。岩場の差異の要因としては、国土数値情報ではより海側に線引されているが、衛星画像からの出力結果では、陸側に沿っていることの違いによるものと考えられる。漁港付近の特異な差は、衛星画像では漁港までの航路沿いにLineが形成されているのに対し、国土数値情報では漁港の海側を延伸する形で線引きされていることで生じている。また、砂浜・河口域に確認できる差異は流砂や植生による土地変化によるものと推測される。
屋嘉田潟原における海岸線の抽出は、潮位が比較的高かった日時に観測された衛星画像を用いている。逆に潮位が低い日時の画像を用いて、海岸線と同じプロセスを適用し干潟抽出を行った。閾値によるShape Lineは、近赤外画像で浅瀬部分を沿うように形成されている。比較した自然環境保全基礎調査のShapeポリゴンが示すLineとはやや異なる結果となった。屋嘉田潟原での検証結果を基に、恩納村海岸全体及び沖縄県中城湾に適用した結果についても報告する。