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[HTT17-P07] ひまわり8号画像解析による東シナ海におけるPM2.5の越境輸送過程把握
キーワード:ひまわり8号画像、越境輸送過程、PM2.5、東シナ海
PM2.5は、肺の奥深くまで入りやすく、呼吸器系への影響に加え、循環器系への影響が懸念されている。アジア大陸のPM2.5濃度は日本の平均濃度と比べると高い数値であり、アジア大陸から対馬、福岡と福江と長崎に越境してきた汚染物質が比較的多く、 隣国と距離が近い九州地方では、アジア大陸からの越境汚染の影響を受けやすいことが報告されている。
越境汚染物質の挙動は、主に地球観測衛星Tera/AquaによるMODISやひまわり8号による観測により、Aerosol Optical Depth (AOD)により研究されている。我々が研究対象にしている済州島、対馬列島、長崎半島に囲まれた東シナ海では、海上が雲で覆われている日が多いため、雲によってAODの挙動を把握することができず、衛星観測でAODが把握できる日が、非常に稀である。そこで、本研究では、雲で覆われた領域のPM2.5が雲と同じ方向・速度で移動すると仮定し、衛星画像の雲の軌跡からPM2.5の動向を探ることを目的とした。
まず、JAXAの分野横断型プロダクト提供システムのJAXA作成の投影変換済みひまわりL1格子化データ(10分毎、空間分解能2km)のひまわり8号の画像データを入手し、フルディスク領域から東シナ海の領域を抜き出した赤外線画像を作成した。赤外線画像は、高い高度の雲の動きを把握するために6.9 μmの赤外線画像(バンド9)を低い雲の動きに対しては8.6 μmの赤外線画像(バンド11)を使用した。
雲の動きを把握する手法について述べる。軌跡を求めるために、ある時間の赤外線画像の上下左右20ピクセルの領域の41x41ピクセル(80x80km)と次の10分後の画像の同じサイズの各ピクセルの温度差の2乗和を計算し、10分後の領域を15ピクセル(30km)分上下左右に移動させながら総和が最も小さい位置を次の10分後の移動位置とした。この作業を繰り返すことで、10分ごとの雲の動きから越境浮遊物質の挙動を推定した。
2019年10月29日から2022年2月1日までの期間で、多くの越境浮遊物質の移動が観測された41イベントに対して行った。済州島,対馬,福江,長崎大学,大村に観測装置を設置し、それぞれの場所でPM2.5の濃度の上昇を検知してPM2.5の異なる到達時間を検知し,その時間差から時速および角度を算出している。
バンド9の赤外線画像から見積もった上層の雲とバンド11から見積もった下層の雲の挙動を比較した。上層の雲は時速100kmを超える高速の移動が見積もれ、上空の雲に解析領域が支配される時のイベントでは、地上での計測からの方向と速度が大きく異なっていた。下層の雲が追尾できるイベントでは、地上の観測に近い結果を得ることができた。しかし、いくつかのイベントに関して、異なる結果を得た。そこで、大気汚染予測システムVENUSのシミュレーション結果との比較を試みた。VENUSが提示する風の動きと見積もった下層の雲の挙動が、ほぼ一致していた。例えば、大陸における越境浮遊物質の分布が北東から南西に分布していて、西方向に移動した場合、北の観測地から濃度が高くなる。もし、地上の観測のみでは、北から越境浮遊物質が移動していると見なしてしまう。
地上観測結果、ひまわり8号画像解析、VENUSらの大気汚染予測システムを複合的に解析することで、衛星観測だけでは把握できなかった東シナ海におけるPM2.5の越境輸送過程把握を行うことができた。
越境汚染物質の挙動は、主に地球観測衛星Tera/AquaによるMODISやひまわり8号による観測により、Aerosol Optical Depth (AOD)により研究されている。我々が研究対象にしている済州島、対馬列島、長崎半島に囲まれた東シナ海では、海上が雲で覆われている日が多いため、雲によってAODの挙動を把握することができず、衛星観測でAODが把握できる日が、非常に稀である。そこで、本研究では、雲で覆われた領域のPM2.5が雲と同じ方向・速度で移動すると仮定し、衛星画像の雲の軌跡からPM2.5の動向を探ることを目的とした。
まず、JAXAの分野横断型プロダクト提供システムのJAXA作成の投影変換済みひまわりL1格子化データ(10分毎、空間分解能2km)のひまわり8号の画像データを入手し、フルディスク領域から東シナ海の領域を抜き出した赤外線画像を作成した。赤外線画像は、高い高度の雲の動きを把握するために6.9 μmの赤外線画像(バンド9)を低い雲の動きに対しては8.6 μmの赤外線画像(バンド11)を使用した。
雲の動きを把握する手法について述べる。軌跡を求めるために、ある時間の赤外線画像の上下左右20ピクセルの領域の41x41ピクセル(80x80km)と次の10分後の画像の同じサイズの各ピクセルの温度差の2乗和を計算し、10分後の領域を15ピクセル(30km)分上下左右に移動させながら総和が最も小さい位置を次の10分後の移動位置とした。この作業を繰り返すことで、10分ごとの雲の動きから越境浮遊物質の挙動を推定した。
2019年10月29日から2022年2月1日までの期間で、多くの越境浮遊物質の移動が観測された41イベントに対して行った。済州島,対馬,福江,長崎大学,大村に観測装置を設置し、それぞれの場所でPM2.5の濃度の上昇を検知してPM2.5の異なる到達時間を検知し,その時間差から時速および角度を算出している。
バンド9の赤外線画像から見積もった上層の雲とバンド11から見積もった下層の雲の挙動を比較した。上層の雲は時速100kmを超える高速の移動が見積もれ、上空の雲に解析領域が支配される時のイベントでは、地上での計測からの方向と速度が大きく異なっていた。下層の雲が追尾できるイベントでは、地上の観測に近い結果を得ることができた。しかし、いくつかのイベントに関して、異なる結果を得た。そこで、大気汚染予測システムVENUSのシミュレーション結果との比較を試みた。VENUSが提示する風の動きと見積もった下層の雲の挙動が、ほぼ一致していた。例えば、大陸における越境浮遊物質の分布が北東から南西に分布していて、西方向に移動した場合、北の観測地から濃度が高くなる。もし、地上の観測のみでは、北から越境浮遊物質が移動していると見なしてしまう。
地上観測結果、ひまわり8号画像解析、VENUSらの大気汚染予測システムを複合的に解析することで、衛星観測だけでは把握できなかった東シナ海におけるPM2.5の越境輸送過程把握を行うことができた。