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[MAG34-07] 福島第一原子力発電所事故後の地下水中3Hを用いたトレーサー研究の流出解析への応用
キーワード:セシウム137、トリチウムトレーサー、表面流、基底流、福島第一原子力発電所事故
トリチウム(3H)は、地下水の年代や表面水と地下水流の関連性を推定するためのトレーサーとしてよく用いられる。福島第一原子力発電所事故後の2013、2014年に発生したタンクエリアからの3Hは、地下水を介して下流へ移動し井戸や排水路で検出されている。排水路は敷地内の雨水を集めて港湾内に排出しており、排水路の流出口付近では海水のセシウム―137(137Cs)濃度も高くなるため、排水路の137Csフラックス形成要因の解明が急務である。また、排水路水に含まれる3H濃度は少雨時に高く、井戸内の3H濃度を加重平均した値と同様であり、降雨時には減少する傾向がみられる。そこで本研究はこの関係を利用し、地下水中の3Hをトレーサーとして活用し、排水路に流入する表面流および基底流の流出量の寄与率を算出した。さらに算出した寄与率を使用して推定した排水路に流入する表面流の137Cs濃度の評価を試みた。
解析に使用した2015年から2020年にかけての主なデータは、東京電力ホールディングスのホームページから入手した。排水路水に含まれる3H、137Cs、β濃度を三角プロットに落とすと、排水路水は2種混合水であることが明らかとなった。したがって、排水路水中の3H濃度および流量を使用した2成分混合モデルで、表面流と基底流の寄与率を計算することができた。表面流の寄与が大きくなると排水路中の137Cs濃度が上昇する傾向が示されたが、推定された表面流に含まれる137Cs濃度は、表面流の寄与とは関係ないことが明らかとなった。また、2016年までは数百Bq/Lであった表面流の推定濃度は、2020年には数十Bq/Lに減少しているが、2017年以降の濃度減少は認められなかった。このように、事故後発生した3Hはトレーサーとして敷地内の流出解析に応用することができ、敷地内における放射性物質濃度の動態研究のさらなる展開につながると期待できる。
解析に使用した2015年から2020年にかけての主なデータは、東京電力ホールディングスのホームページから入手した。排水路水に含まれる3H、137Cs、β濃度を三角プロットに落とすと、排水路水は2種混合水であることが明らかとなった。したがって、排水路水中の3H濃度および流量を使用した2成分混合モデルで、表面流と基底流の寄与率を計算することができた。表面流の寄与が大きくなると排水路中の137Cs濃度が上昇する傾向が示されたが、推定された表面流に含まれる137Cs濃度は、表面流の寄与とは関係ないことが明らかとなった。また、2016年までは数百Bq/Lであった表面流の推定濃度は、2020年には数十Bq/Lに減少しているが、2017年以降の濃度減少は認められなかった。このように、事故後発生した3Hはトレーサーとして敷地内の流出解析に応用することができ、敷地内における放射性物質濃度の動態研究のさらなる展開につながると期待できる。