日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] オンラインポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS02] Evolution and variability of the Asian Monsoon and Indo-Pacific climate during the Cenozoic Era

2023年5月25日(木) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (13) (オンラインポスター)

コンビーナ:佐川 拓也(金沢大学理工研究域)、松崎 賢史(東京大学 大気海洋研究所)、Sze Ling Ho(Institute of Oceanography, National Taiwan University)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/24 17:15-18:45)

13:45 〜 15:15

[MIS02-P06] 過去18万年における地軸傾斜角の変動による西部熱帯太平洋水温躍層水塊構造への影響

*内田 貴之1佐川 拓也2久保田 好美3 (1.金沢大学大学院自然科学研究科、2.金沢大学理工研究域、3.国立科学博物館)


キーワード:西太平洋暖水塊、浮遊性有孔虫、古水温復元

西部熱帯太平洋の表層には西太平洋暖水塊(Western Pacific warm pool : WPWP)と呼ばれる世界で最も高温な表層海水が広く分布し、大気への熱と水蒸気の供給源となることから、その変動は全球的な気候変動にも大きな影響を及ぼしている。熱帯域の気候で重要な特徴の1つに熱帯収束帯(Intertropical Convergence Zone: ITCZ)がある。ITCZの対流活動によって放出される潜熱は大気大循環の駆動源となっている。ITCZの存在は海洋の水温躍層構造に影響を及ぼす。ITCZに吹き込む貿易風が起こすエクマン輸送によって表層海水が南北に発散し、これを補うように深部から低温な海水が湧き上がる。この湧昇帯は鉛直水温の南北断面上で等温線が盛り上がっていることから水温躍層リッジと呼ばれている。このように ITCZは大気、海洋に大きな影響を及ぼすことが知られるが、ITCZ の長期的変動が海洋内部にどのような影響を及ぼすのかはよくわかっていない。そこで本研究では水温躍層リッジの氷期・間氷期サイクルでの挙動を明らかにすることで ITCZ が海洋内部に対してどのような影響を与えていたかを検証した。試料はWPWPに位置するWest Caroline Basinで採取されたピストンコアKH-92-1 3aPCを用いた。このサイトは現在の水温躍層リッジが位置する場所にある。堆積物から拾い出した浮遊性有孔虫Globigerinoides ruberPulleniatina obliquiloculataのMg/Ca分析によって、表層・水温躍層を過去18万年間にわたって復元した。水温躍層の水温、δ18Olocal(塩分指標)は地軸傾斜角との対応関係が見られ、地軸傾斜角が小さい時期に水温と塩分が下がる特徴があった。このサイトの水温躍層は高温高塩分なNorth Pacific tropical water (NPTW)と低温低塩分の湧昇水の2つの水塊から構成される。地軸傾斜角の変動がこのサイトの水温躍層の水塊構造を駆動しており、地軸傾斜角が大きいときはNPTWの寄与が大きくなり、地軸傾斜角が小さいときは湧昇水の寄与が大きくなることが示唆された。したがって、地軸傾斜角の変動によって [1] NPTWの輸送量の変化 [2] 湧昇の強度変化 [3] ITCZとともに水温躍層リッジが南北移動した可能性が考えられる。またこれらの変動は地軸傾斜角の変動に伴うITCZの幅の変化や熱の南北輸送量の変化と関連している可能性がある。