日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS07] 地球表層における粒子重力流のダイナミクス

2023年5月24日(水) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (17) (オンラインポスター)

コンビーナ:成瀬 元(京都大学大学院理学研究科)、酒井 佑一(宇都宮大学農学部)、志水 宏行(砂防・地すべり技術センター)、田邊 章洋(防災科学技術研究所)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/23 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[MIS07-P05] 全層雪崩の観測事例を用いた雪崩モデルのパラメータ推定とその適応性

*田邊 章洋1 (1.防災科学技術研究所)

キーワード:雪崩、逆解析、モデルパラメータ、数値解析

雪崩は微視的には雪や氷などの固体が流れているものの,巨視的にみるとそれら固体の集団が相互作用しながら流体のような振る舞いを見せる.このような観点からその巨視的な流れを連続体としてモデル化する試みが古くから行われており,連続体近似した運動方程式が導かれている(Rauter et al., 2018).このような運動方程式を解くシミュレータは数値解法の違いによって様々提案されているが,どの手法においても複数個のモデルパラメータを与える必要がある.しかしながらその与え方は経験に依存するところが大きく,その整理が不十分であるため,ある事例に対して最適化したパラメータ値を与えることは難しい.また,このような最適パラメータの指針は,防災上も重要である.そこで本研究では,Fisher et al.,(2015)で提案された手法を用いて,観測事例をある程度の誤差を許容して最適なパラメータ分布を推定し,それを用いた多事例への再現可能性を調べた.
観測事例として山形県最上郡内の急斜面で記録された雪崩事例を対象とした.まず,雪崩事例のタイムラプス画像とUAVによる空撮結果をもとに雪崩の先端の速度や到達距離,デブリの厚さなどを求めた.次に複数のモデルパラメータ値に適当な範囲を与え,一様分布を仮定してランダムにパラメータの組を作成した.作成したパラメータの組を用いて雪崩計算を実施し,観測から得られた値と比較した.比較結果が基準以上であれば採択,以下であれば不採択として,採択されたパラメータの組から事例を再現するのに最適な雪崩パラメータ分布を再構築し,このように構成したパラメータ分布が,同じ地区で起きた別の雪崩のダイナミクスを再現しうるか議論する.

【引用文献】
Fischer, J.-T., Kofler, A., Fellin, W., Granig, M., and Kleemayr, K., (2015) Journal of Glaciology, 61, 229.
Rauter, M., Kofler, A., Huber, A. and Fellin, W. (2018) Geosci. Model Dev., 11, 2923-2939.