日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS10] 山の科学

2023年5月26日(金) 09:00 〜 10:30 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、奈良間 千之(新潟大学理学部フィールド科学人材育成プログラム)、西村 基志(国立極地研究所 国際北極環境研究センター)、座長:西村 基志(国立極地研究所 国際北極環境研究センター)、佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、奈良間 千之(新潟大学理学部フィールド科学人材育成プログラム)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)

09:15 〜 09:30

[MIS10-02] 上高地・明神岳南斜面における気温鉛直構造の特性

*金子 滉克1佐々木 明彦2榊原 厚一3鈴木 啓助4 (1.信州大学大学院総合理学研究科、2.国士舘大学文学部、3.信州大学理学部、4.信州大学山の環境研究センター)


キーワード:山岳地域、冷気湖

山岳地帯の盆地形や谷地形では,大気現象の一つである冷気湖現象が発生しやすい.この冷気湖現象について,冷気湖形成とその成層構造(層厚)について実測値をもとに調査した例は少ない.また,近年では気候変動下で山岳域の冷気湖形成がどのように影響されるか注目されており,長期的で詳細の観測が求められる.そこで本研究では,上高地・明神岳南斜面において数年にわたって気温観測を行い,山岳地域での冷気湖の鉛直構造(層構造)の特性を明らかにすることする.そのために,上高地の谷底部から標高50 mごとに気温計測ロガーを設置し,毎正時の気温観測を行った.
冷気湖は月に10回以上形成され,夏季に増加する傾向があった.夏季は年によって,イベント数が大きく変化し,冬季は変化が小さかった.各月の平均冷気層高度も同様に,夏季は年によって変化が大きくなった.2019-2020 年冬季は,全国的に記録的な暖冬でもあり山岳域でも同様の傾向が見られたが,イベント数や冷気層高度の変化はみられなかった.各月の全冷気湖イベントにおける,各標高冷気湖総形成持続時間は,1700 m地点と上層部の時間差が,冬季は小さく,夏季は大きくなった.
急峻な谷地形によって,年間を通して冷気湖が発生することが分かった.また,冷気湖形成過程の違いが,形成持続時間や冷気層高度に影響していることが考えられ,その要因の一つとして地表面条件の変化に伴う放射冷却量の変化が考えられる.