日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS10] 山の科学

2023年5月26日(金) 09:00 〜 10:30 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、奈良間 千之(新潟大学理学部フィールド科学人材育成プログラム)、西村 基志(国立極地研究所 国際北極環境研究センター)、座長:西村 基志(国立極地研究所 国際北極環境研究センター)、佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、奈良間 千之(新潟大学理学部フィールド科学人材育成プログラム)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)

09:30 〜 09:45

[MIS10-03] 定点観測カメラを用いた高山帯における雲動態の自動観測と分類

*岡本 遼太郎1小熊 宏之2浜田 崇3 (1.筑波大学、2.国立環境研究所、3.長野県環境保全研究所)


キーワード:高山気象、機械学習、定点カメラ

高山生態系は気候変動に対して極めて脆弱であり、その観測は固有種が多い高山生態系の保全の上でも、また気候変動への生態系の応答機構を探る上でも重要である。本研究では高山帯に特徴的な局所的、短時間に出現する霧・雲を対象に、定点カメラを用いた自動観測手法の開発を行っている。雲、霧の時間的な動態は動物の行動パターンや植物の光合成に影響することが予想されるが、人の常駐が困難な高山帯では従来行われてきた目視による観測が難しく、研究事例が少ない。定点カメラを用いるメリットとしては、1.衛星画像と比べて悪天の影響を受けにくいこと、2.衛星画像と異なり、上空の雲と地上の霧を区別できること、3.安価に高頻度の観測を実現できること、が挙げられる。

 本研究のこれまでの成果として、定点カメラ画像を一定の大きさのタイルに分割し、深層学習でそれぞれのタイルごとに霧、雲の有無を判別する手法が開発されている。この手法を毎時一枚程度の高頻度で撮影された高山帯の定点カメラ画像に適用することで、画像中のどの場所(山の稜線や山腹など)に雲、霧がかかっているかを把握し、雲の位置の時間的な変化(例:朝は晴れていたが昼頃稜線付近に雲が湧き、午後には稜線が雲に覆われる)を表す時系列データを得られる。本研究ではこの時系列データをクラスタリングし、高山帯における雲・霧の時系列パターンを自動探索した。これにより、例えば各パターンの発生頻度といった形で、雲、霧の時間動態の傾向やその変化を得られる。

 開発手法を既存の定点カメラに適用することで、従来知見の乏しかった高山帯の雲、霧の動態について明らかにするとともに、その変化検出や気候変動との関係、生態系への影響の解明に寄与すると期待される。発表では、長野県蝶ヶ岳に設置された定点カメラ画像9年分を用いた解析結果について報告する。