日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS10] 山の科学

2023年5月26日(金) 10:45 〜 12:00 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、奈良間 千之(新潟大学理学部フィールド科学人材育成プログラム)、西村 基志(国立極地研究所 国際北極環境研究センター)、座長:佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、西村 基志(国立極地研究所 国際北極環境研究センター)、奈良間 千之(新潟大学理学部フィールド科学人材育成プログラム)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)

11:20 〜 11:40

[MIS10-09] 山岳システムにおける地表水-地下水の相互作用 ー北アルプスにおける成果と今後の展望ー

★招待講演

*榊原 厚一1、藤野 真優2金井 杏樹3辻村 真貴4鈴木 啓助1 (1.信州大学理学部理学科、2.筑波大学大学院生命地球科学研究群、3.信州大学大学院総合理工学研究科、4.筑波大学生命環境系)

キーワード:北アルプス、地表水-地下水交流、降雨流出、水貯留

多量の降水量・積雪量を有する山岳域は,水の移行に伴う諸現象(例えば,土砂移行,地形変化,植生の形成など)が動的に起こる場である.また,気候変動によって,降水量変化や雨雪率変化などの降水レジームが変化する可能性が指摘されている.そのため,山岳では,水移行に関わる急速な環境変化が起こりうり,山岳域における水循環機構の理解の重要性が高まっている.水循環機構の中でも,地表水の地下への浸透と地下水の地表への流出,すなわち地表水-地下水相互作用は,最も基本的な水文学的過程の一つである.山岳域は,急峻な地形による大きな動水勾配,種々の粒径や性質を有する土砂が堆積する条件,亀裂が卓越する地質構造などを有する.しかしながら,これらの条件が山岳域の地表水-地下水の相互作用にどのように影響しているのかということは十分に明らかとなっていない.

演者らは,北アルプス地域とその下流部を研究対象とし,地表水-地下水の相互作用を明らかとするべく,現場観測に基づく調査・研究を実施してきた.そのなかで,山体地下水が山岳渓流の基底流を維持させる役割を有していること,基岩が露出する流域か砂礫が堆積する構造を有しているかによって降水時のピーク流出発生のメカニズムが異なること,高山域における土壌層の存在が水貯留機能をもたらしていることなどが明らかになりつつある.本発表では,従来から指摘されている山岳域の水文過程を概説し,これまでの北アルプス(主に乗鞍岳)における地表水-地下水相互作用に関わる研究成果と今後の展望を発表する.