日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS10] 山の科学

2023年5月26日(金) 15:30 〜 17:00 オンラインポスターZoom会場 (11) (オンラインポスター)

コンビーナ:苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、奈良間 千之(新潟大学理学部フィールド科学人材育成プログラム)、西村 基志(国立極地研究所 国際北極環境研究センター)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/26 17:15-18:45)

15:30 〜 17:00

[MIS10-P05] 山形県月山の彩雪現象の反射スペクトルと雪氷藻類の関係

*阿部 稜平1小野 誠仁1竹内 望1 (1.千葉大学)

キーワード:月山、彩雪現象、雪氷藻類、反射スペクトル

雪氷藻類とは,氷河や雪渓の雪氷表面で繁殖する光合成微生物である.雪氷藻類の細胞内には多様な色素が含まれるため,藻類が繁殖した積雪表面は,緑色や赤色を呈す.これらは緑雪や赤雪と呼ばれ,総称して彩雪現象と呼ばれる.彩雪現象の可視光反射スペクトルは,雪氷中の藻類の存在量や色素の種類によって特有のスペクトルを示す.しかしながら,雪氷藻類は多様な色素を持つことから,反射スペクトルと彩雪中の雪氷藻類との詳細な関係は分かっていない.そこで本研究では,様々な色の彩雪が観察できる山形県月山の彩雪現象を用いて,彩雪表面の反射スペクトルと雪氷藻類の関係を明らかにすることを目的とした.赤雪および緑雪の反射スペクトルは,いずれも特徴的な形状を示した.赤雪と緑雪の反射スペクトルでは,675 nm付近の長波長側と450 nm付近の短波長側に2つの反射率の低下域が見られることがわかった.長波長側の反射率の低下域は,雪氷藻類細胞中のクロロフィルaおよびクロロフィルbの吸収に起因すると考えられる.700 nmと675 nmの反射率の差と積雪中のクロロフィルa濃度の間には,有意な正の相関があった.両者の関係の回帰直線から,雪氷中のクロロフィルa濃度を定量できると考えられる.短波長側反射率の低下域は,雪氷藻類細胞中のクロロフィルa,クロロフィルbおよび一次カロテノイド類の吸収に起因すると考えられる.一方,赤雪の反射率の低下域は,緑雪に比べ長波長側に広い波長域である特徴がみられた.これは,より長波長側に吸収域をもつアスタキサンチンが赤雪を構成する雪氷藻類に含まれることに起因すると考えられる.600 nmと550 nmの反射率の差と赤雪中のアスタキサンチン濃度には,有意な正の相関があった.両者の関係の回帰直線を用いて,赤雪中のアスタキサンチン濃度を定量できると考えられる. 以上の反射スペクトルとクロロフィルa濃度およびアスタキサンチン濃度に定量関係があったことから,反射スペクトルを用いて雪氷藻類量の定量と赤雪緑雪判別を同時に行うことが可能な散布図を作成した.雪面の表面反射スペクトルを測定し,あらかじめ領域分けされた本散布図へ結果をプロットすることで,詳細な分析を経ずに赤雪と緑雪の判別,および藻類量の定量が可能であると考えられる.