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[MIS15-P09] 湖沼堆積物を用いたバイカル湖南部における過去15万年間の古環境変動解析
キーワード:生物生産、乾湿変動、河川作用、氷河作用、海洋酸素同位体ステージ 5d、最終氷期極大期
シベリア南東部・バイカル湖地域は日射量変動に対して世界で最も鋭敏に応答してきた地域である。これまでにバイカル湖湖底堆積物を用いた古環境変動解析研究は数多く行われてきた(例えば、Prokopenko et al., Quat Sci Rev, 2006)。しかし復元された古気候記録の多くは生物起源シリカ(BioSi)や花粉化石を中心とした生物情報に基づくものであった。このため、氷期のような寒冷乾燥した大陸内の気候下では生物生産が激減するため、その時代の古気候・古環境変動は良く分かっていなかった。
そこで本研究は、1999年に湖南部のセレンガ川河口におけるポソルスカヤバンクで掘削されたBDP99-1コア(全長 113.3 m; BDP99-Members, Quatern Int, 2005)を用いて、BioSi含有量に加えて、ウラン(U)含有量と鉱物粒子径の分析を実施し、過去15万年間(全長24 m分)の古環境変動復元研究を実施した。
分析試料の準備は、0.05 gの乾燥試料を用いて、H2O2による有機物除去とHClによる炭酸塩除去を順次行った後、Na2CO3を用いてBioSi成分と残渣の鉱物粒子を抽出した。そしてBioSiのICP-AES定量分析によりBioSi含有量を、レーザー回折散乱分析により鉱物粒子径をそれぞれ求めた。U・Th含有量については、混酸(HF, HNO3, H2O2)による全分解法で求められた(Murakami et al., J. Paleolimnol, 2010)。
BDP99-1の年代軸は、先行研究(BDP-Members 2005)の帯磁率変動をもとに構築されてきた。このうち、上位20 mに関しては、深度1.25 mがベーリング温暖期、 深度13.61 mがMIS 5a上部、深度18.33 mがMIS 5c下部、深度19.34 mがMIS 5e上部で与えられてきた。その結果を本研究のBioSi含有量変動と比較し、ベーリング温暖期、MIS 5a上部は対応し、深度16.07 mのBioSiピークはMIS 5cに対応することから、深度18.33 mのMIS 5c下部は、深度16.73 mであることが判明した。これにより、堆積速度は従来に比べて、MIS 5c下部(104 ka)からMIS 5a上部(71 ka)では13.5 cm/kyrから8.27 cm/kyrに減少し、MIS 5e上部(115 ka)からMIS 5c下部(104 ka)では12.7 cm/kyrから28.3 cm/kyrに増加した。
鉱物粒径は3.87~14.58 μmの範囲でシルトを主体とし、間氷期に粗粒、氷期に細粒なった。MIS 1, 5eの層準における粒度分布は、最表層の河川作用で生じたシルトサイズと砂サイズの2つのピークを主体として構成される。一方、MIS 2, 4の層準では、粘土、シルト及び砂の3つのサイズのピークから成る。これは、砂サイズが氷河運搬砕屑物(IRD)、粘土サイズが氷縞粘土に起因することを意味し、湖南部山岳における氷河発達が示唆される。また、この様な細粒化はMIS 5dに対応する110 kaで認められ、MIS 5dの寒冷化に伴って大規模な氷河形成が湖南部の山岳地帯で生じたことに起因すると考えられる(Karabanov et al., Quat Res, 1998)。
一方で、U/Th比はセレンガ川流域の乾湿指標であり(Murakami et al., Quat Sci Rev, 2012)、間氷期(MIS 1, 3, 5)は氷期(MIS 2, 4)に比べて湿潤化したと推定される。また、106~105 ka(MIS 5d)、67 ka(MIS 4)、23 ka(MIS 2)ではU濃度の一時的な増加が見られた。これは、LGMの地形学的研究(Osipov and Khlystov, Paleo-3, 2010)から推定されているように、湖南部の山岳氷河発達とそれによる夏季融解水のセレンガ川への流出によって生じたものと推察される。
そこで本研究は、1999年に湖南部のセレンガ川河口におけるポソルスカヤバンクで掘削されたBDP99-1コア(全長 113.3 m; BDP99-Members, Quatern Int, 2005)を用いて、BioSi含有量に加えて、ウラン(U)含有量と鉱物粒子径の分析を実施し、過去15万年間(全長24 m分)の古環境変動復元研究を実施した。
分析試料の準備は、0.05 gの乾燥試料を用いて、H2O2による有機物除去とHClによる炭酸塩除去を順次行った後、Na2CO3を用いてBioSi成分と残渣の鉱物粒子を抽出した。そしてBioSiのICP-AES定量分析によりBioSi含有量を、レーザー回折散乱分析により鉱物粒子径をそれぞれ求めた。U・Th含有量については、混酸(HF, HNO3, H2O2)による全分解法で求められた(Murakami et al., J. Paleolimnol, 2010)。
BDP99-1の年代軸は、先行研究(BDP-Members 2005)の帯磁率変動をもとに構築されてきた。このうち、上位20 mに関しては、深度1.25 mがベーリング温暖期、 深度13.61 mがMIS 5a上部、深度18.33 mがMIS 5c下部、深度19.34 mがMIS 5e上部で与えられてきた。その結果を本研究のBioSi含有量変動と比較し、ベーリング温暖期、MIS 5a上部は対応し、深度16.07 mのBioSiピークはMIS 5cに対応することから、深度18.33 mのMIS 5c下部は、深度16.73 mであることが判明した。これにより、堆積速度は従来に比べて、MIS 5c下部(104 ka)からMIS 5a上部(71 ka)では13.5 cm/kyrから8.27 cm/kyrに減少し、MIS 5e上部(115 ka)からMIS 5c下部(104 ka)では12.7 cm/kyrから28.3 cm/kyrに増加した。
鉱物粒径は3.87~14.58 μmの範囲でシルトを主体とし、間氷期に粗粒、氷期に細粒なった。MIS 1, 5eの層準における粒度分布は、最表層の河川作用で生じたシルトサイズと砂サイズの2つのピークを主体として構成される。一方、MIS 2, 4の層準では、粘土、シルト及び砂の3つのサイズのピークから成る。これは、砂サイズが氷河運搬砕屑物(IRD)、粘土サイズが氷縞粘土に起因することを意味し、湖南部山岳における氷河発達が示唆される。また、この様な細粒化はMIS 5dに対応する110 kaで認められ、MIS 5dの寒冷化に伴って大規模な氷河形成が湖南部の山岳地帯で生じたことに起因すると考えられる(Karabanov et al., Quat Res, 1998)。
一方で、U/Th比はセレンガ川流域の乾湿指標であり(Murakami et al., Quat Sci Rev, 2012)、間氷期(MIS 1, 3, 5)は氷期(MIS 2, 4)に比べて湿潤化したと推定される。また、106~105 ka(MIS 5d)、67 ka(MIS 4)、23 ka(MIS 2)ではU濃度の一時的な増加が見られた。これは、LGMの地形学的研究(Osipov and Khlystov, Paleo-3, 2010)から推定されているように、湖南部の山岳氷河発達とそれによる夏季融解水のセレンガ川への流出によって生じたものと推察される。