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[MIS17-01] 海岸プラごみ物体検出用データセットとその活用による初期結果
キーワード:海岸モニタリング、マクロプラスチック、画像処理、人工知能、深層学習、学習データセット
現在、海洋プラスチック汚染は世界的な関心事となっている。しかしながら、その汚染状況について正確に把握するための技術はいかなる環境中においてもほとんど確立されていない。海岸は、人の生活圏と密接な結びつきを持ち、河川や外洋からのごみも漂着する。長い間、海岸プラスチックごみの現存量の把握や環境負荷の推定に関わる調査は、人力でのごみの回収による計数や目視によるトランゼクトなどの重労働を伴う調査方法が用いられてきた。空中ドローンに搭載されたカメラ、ウェブカメラ、スマートフォンなどで撮影できる画像を活用することで、前述のような調査方法に代わる技術の検討が可能であるが、これには、画像解析の自動化が不可欠である。我々は既に、ディープラーニングを用いて海岸の画像から、漂着した人工ごみの領域をピクセルレベルで推定する技術を開発し、現在は、プラスチックごみをさらに細かい13クラスの分類で同定する技術を開発中である。このような手法開発には、開発したモデルのパフォーマンスに影響する学習データセットの作成が極めて重要である。我々は、機械学習技術の開発に用いることが可能な、海岸のプラスチックごみ検出用の学習データセットBePLi Dataset (Beach Plastic Litter Dataset)を作成した。当該データセットのバージョン1は既にSea Open Scientific Data Publication(SEANOE)で公開し、現在はバージョン2を整備している。当該データセットの作成には、山形県の自治体から提供を受けた海岸ごみのモニタリング記録を活用している。これらは、同県の海岸全長に渡る167ヶ所において、浜辺に立った人が撮影した画像からなり、背景の条件も砂浜・岩場・消波ブロックなど多様である。さらに、その画像データはExcelシートに貼り付けられたものであったが、BePLi Datasetの作成には、3708枚分の画像を抽出して用いた。これらの画像に対応するアノテーションは手作業による塗り分けで作成し、インスタンスセグメンテーションや矩形による物体検出技術の開発が可能なフォーマットとなっている。現在は、これらのデータセットのラベルの詳細について解析し、そのデータを活用した深層学習モデルの開発に着手している。本発表では、整備したBePLi Datasetについて紹介し、テスト開発したモデルの初期結果について報告する。