10:45 〜 12:15
[MIS21-P07] ルートレス噴火における空間分布のself-organizationプロセスの実験的検証
キーワード:ルートレス噴火、アナログ実験、火星
ルートレス噴火とは、高温の溶岩が含水層を被覆することによって生じる水蒸気爆発が連続する現象である(e.g., Thorarionson, 1951; 1953)。爆発による放出物が火口周辺に堆積することにより、円錐形の山体(ルートレスコーン)が形成される。ルートレスコーンが面的に分布するルートレスコーンフィールドは、地球上では水環境と火山が多く存在するにもかかわらず極めて限られた地域にしか見られないが、火星では多くの地域で見られることが報告されている(e.g., Greeley et al., 2002)。ルートレスコーンは火星でも水が存在したことを示す証拠であるため、火星の地質史と気候進化を理解する上で重要な意味を持っている。Hamilton et al. (2010)では、最近傍法およびボロノイ解析を用いて、ルートレス噴火/コーンの空間分布を定量化した。アイスランドのルートレスコーンフィールドでの解析結果から、ルートレスコーンの空間分布はランダムではなく秩序立っており、ボロノイ解析によるセル配置が蜂の巣状となっていることが明らかとなった。このことから、爆発で消費する水の近傍爆発点との奪い合いによる空間分布の自己組織化(self-organizationプロセス)が働いているのではないかと考えられている。Self-organizationプロセスは自然界のデータと理論から支持されるが、実験的アプローチからの検証はこれまで行われていない。そこで本研究では、Noguchi et al. (2018)で行われた実験を元に、self-organitationプロセスをアナログ実験系で検証することにした。
本研究では、加熱した水飴を溶岩に、重曹とケーキシロップの混合物(以下、基質と呼ぶ)を含水層に見立て、基質の上に水飴を流し入れることでルートレス噴火のアナログとした。実際のルートレス噴火では、溶岩の熱エネルギーが水を気化・膨張させることで運動エネルギーとなり爆発に至る。この代替として、本実験では、重曹の熱分解とそれに伴うCO2発生(1式)を、熱エネルギーから運動エネルギーへの変換とみなした。
2NaHCO3➝Na2CO3+H2O+CO2 …(1)
実験は300mlビーカー内で行った。基質を構成する重曹とケーキシロップの比率は、36g:14gで固定した。基質の上に140℃に加熱した水飴を投入し、重曹の熱分解によって発生するCO2量とビーカー内の変化を測定・観察した。水飴投入量は、100gから350gまで50g刻みで変化させ、各条件を3回ずつ繰り返した。実験を試行している段階で、CO2が水飴層上面に抜け出る通路(火道と呼ぶ)の他に、上面に未達ではあるものの基質上部から短く延びる火道が形成されることが分かった。この短い未達火道は、周囲のCO2発生・上昇箇所からの影響を受けたことにより、途中で形成が止まった(=負けた)火道と見なすことができる。火道の形成が周囲からの影響を受けて止まるというこの現象は、自然界においてルートレス噴火が消費する水を奪い合うself-organizationプロセスに見立てることができる。そこで本研究では、CO2発生量、火道の本数・面積のほかに、未達の火道をloser vent(負けた火道)と名づけて本数を測定することにした。
水飴の投入量とCO2発生量には相関が見られなかった。加熱水飴は基質よりも密度が小さいため、加熱水飴-基質境界面面積が本実験系では一定であったためと考えられる(すなわち、レイリー・テイラー不安定が発生しなかった)。Loser ventの本数は水飴投入量に応じて増加した。また、Loser ventと火道本数の和は、水飴投入量によらず一定であった。
本発表では、実験結果を考察し、火道の束化がルートレス噴火空間分布のself-organizationに寄与し得るかについて議論する。
本研究では、加熱した水飴を溶岩に、重曹とケーキシロップの混合物(以下、基質と呼ぶ)を含水層に見立て、基質の上に水飴を流し入れることでルートレス噴火のアナログとした。実際のルートレス噴火では、溶岩の熱エネルギーが水を気化・膨張させることで運動エネルギーとなり爆発に至る。この代替として、本実験では、重曹の熱分解とそれに伴うCO2発生(1式)を、熱エネルギーから運動エネルギーへの変換とみなした。
2NaHCO3➝Na2CO3+H2O+CO2 …(1)
実験は300mlビーカー内で行った。基質を構成する重曹とケーキシロップの比率は、36g:14gで固定した。基質の上に140℃に加熱した水飴を投入し、重曹の熱分解によって発生するCO2量とビーカー内の変化を測定・観察した。水飴投入量は、100gから350gまで50g刻みで変化させ、各条件を3回ずつ繰り返した。実験を試行している段階で、CO2が水飴層上面に抜け出る通路(火道と呼ぶ)の他に、上面に未達ではあるものの基質上部から短く延びる火道が形成されることが分かった。この短い未達火道は、周囲のCO2発生・上昇箇所からの影響を受けたことにより、途中で形成が止まった(=負けた)火道と見なすことができる。火道の形成が周囲からの影響を受けて止まるというこの現象は、自然界においてルートレス噴火が消費する水を奪い合うself-organizationプロセスに見立てることができる。そこで本研究では、CO2発生量、火道の本数・面積のほかに、未達の火道をloser vent(負けた火道)と名づけて本数を測定することにした。
水飴の投入量とCO2発生量には相関が見られなかった。加熱水飴は基質よりも密度が小さいため、加熱水飴-基質境界面面積が本実験系では一定であったためと考えられる(すなわち、レイリー・テイラー不安定が発生しなかった)。Loser ventの本数は水飴投入量に応じて増加した。また、Loser ventと火道本数の和は、水飴投入量によらず一定であった。
本発表では、実験結果を考察し、火道の束化がルートレス噴火空間分布のself-organizationに寄与し得るかについて議論する。