11:30 〜 11:45
[MIS22-08] 日記天気記録と気象要素との対応関係の客観的評価
キーワード:日記天気記録、古気候代替資料、定量化、重複率
古日記の天気記録は、日単位ないしそれ以上の古気候プロキシとしては格段に⾼い時間分解能を持つため、とりわけ近世日本の気候復元に広く⽤いられている。しかし、その記述内容は定性的かつ主観的で、そこから降水量等の客観的数値を推定することには課題がある。本研究では、明治・大正期の測器による気象観測データと照合可能な時代の古日記記録を用いて、日記天気記録の持つ気象・気候に関する情報を最大限に引き出し、定性的な天気記述を定量的な気象・気候変数に変換する手法の開発に取り組んでいる。
ここでは、天気記録と気象要素との対応関係の程度を表す指標として「重複率」を導入する。これは、例えば「降水あり」と「降水なし」、「晴」と「曇」など、日単位の天気記録から何らかの基準により2つの天気カテゴリーを抽出し、気象観測データと対応させた場合、それぞれの天気カテゴリーに対する気象要素の相対度数分布が重なり合う部分の面積で定義されるものとする。この数値が小さい(0に近い)ほど天気カテゴリーと気象要素との対応が良く、大きい(1に近い)ほど対応が悪いことを表す。この指標を用いると、例えば「宅間日記」(京都市、1897-1911年)では、「降水あり」と「降水なし」に対する日降水量の重複率は0.28、「晴」と「曇」に対する日平均雲量の重複率は0.52と求められ、降水の有無の記録に比べて晴と曇の記録の方が気象要素との対応が悪く、天気カテゴリーの境界が曖昧であることが分かった。また、時別(4時間毎)の気象観測データとも照合したが、どちらの場合にも夜間よりも昼間のデータの方が重複率が小さい傾向が見られ、日記天気記録には夜間よりも昼間の状況がより反映されていることが分かった。このように、「重複率」を指標とすることにより、日記天気記録の質を評価するとともに、天気記録の最適なカテゴリー分けの方法や、それと対応させる最適な気象要素を探索することも可能になると考えられる。
ここでは、天気記録と気象要素との対応関係の程度を表す指標として「重複率」を導入する。これは、例えば「降水あり」と「降水なし」、「晴」と「曇」など、日単位の天気記録から何らかの基準により2つの天気カテゴリーを抽出し、気象観測データと対応させた場合、それぞれの天気カテゴリーに対する気象要素の相対度数分布が重なり合う部分の面積で定義されるものとする。この数値が小さい(0に近い)ほど天気カテゴリーと気象要素との対応が良く、大きい(1に近い)ほど対応が悪いことを表す。この指標を用いると、例えば「宅間日記」(京都市、1897-1911年)では、「降水あり」と「降水なし」に対する日降水量の重複率は0.28、「晴」と「曇」に対する日平均雲量の重複率は0.52と求められ、降水の有無の記録に比べて晴と曇の記録の方が気象要素との対応が悪く、天気カテゴリーの境界が曖昧であることが分かった。また、時別(4時間毎)の気象観測データとも照合したが、どちらの場合にも夜間よりも昼間のデータの方が重複率が小さい傾向が見られ、日記天気記録には夜間よりも昼間の状況がより反映されていることが分かった。このように、「重複率」を指標とすることにより、日記天気記録の質を評価するとともに、天気記録の最適なカテゴリー分けの方法や、それと対応させる最適な気象要素を探索することも可能になると考えられる。