日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS23] 火山学と気象学の融合

2023年5月23日(火) 09:00 〜 10:15 301B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:佐藤 英一(気象研究所)、常松 佳恵(山形大学)、座長:佐藤 英一(気象研究所)、常松 佳恵(山形大学)

09:30 〜 09:45

[MIS23-03] 気象レーダによる降水時の桜島火山噴火の検出

*真木 雅之1中道 治久1井口 正人1西 隆昭2、藤吉 康志3佐藤 英一4、小堀 壮彦5、海賀 和彦6、徳島 秀彦7 (1.京都大学防災研究所、2.鹿児島大学水産学部、3.北海道大学名誉教授、4.気象庁気象研究所、5.三菱電機ソフトウエア株式会社、6.株式会社光電製作所、7.FRSコーポレーション)

キーワード:火山噴火、降水、偏波レーダ、エコートップ高さ

国内外の研究により,気象レーダが火山噴煙のモニタリングに有効な手段であることが示されている.残された問題として,降水時や曇天時の噴火の検出がある.本研究では,過去の降水時に発生した桜島火山噴火事例について,気象レーダにより噴火の検出ができたかどうかを調べる.対象としたレーダは国交省垂水XバンドMPレーダ(TRM-XMP),京大防災研の小型XバンドMPレーダ(SVO-XMP),SVOおよび黒神に設置されたXバンド船舶レーダ(SVO-MARINE, KRK-MARINE)の三種類である.調査した噴火事例は,気象庁が発表している桜島の噴火・爆発リストにおいて,2018年から2021年の4年間に発生した噴火のうち噴煙高度が確定出来なかった事例である.典型的な降雨中の噴火の例として,2020年6月4日02時59分に発生した噴火がある.図1はTRM-XMPレーダのPPIスキャンから推定した時間積算レーダ反射因子の分布である.広範囲に広がる降水エコーの中に火口から東に延びる比較的強い帯状エコーが認められる.図2は噴煙エコーが通過したエリアの3カ所に設置されたディスドロメータと噴煙エコーエリア外の降水エリアの3カ所に設置されたディスドロメータの観測により得られた粒子の落下速度と粒径の密度分布である.噴煙エコー内で観測された粒子の落下速度の変動が大きいことがわかる.破線で囲まれた低速度分布は泥雨粒子によるものであると考えられる.図3はSVO-XMPのセクターRHIスキャンから求められた積算レーダ反射因子の鉛直構造の時間変化である.噴火直後の噴煙柱の成長過程とその後の時間変化が捉えられている.気象庁の記録では>1500 mとされていた噴煙高度は,実は7000mに達していたことがわかった.抽出した降雨時の全ての噴火事例について調査した結果,以下のことがわかった.1)レーダによる噴火の検出可能性は噴火の規模と降水の強さによる,2)Xバンド船舶レーダのRHI観測は噴火の検出に最も有効である.3)小型XバンドMPレーダのセクターRHIは検出後の噴煙柱内部の構造を調べるのに有効である,4)XバンドMPレーダのPPI観測は降灰量,降灰エリア,降灰時間の推定に有効である.