日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-ZZ その他

[M-ZZ44] 海底マンガン鉱床の生成環境と探査・開発

2023年5月26日(金) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (25) (オンラインポスター)

コンビーナ:臼井 朗(高知大学海洋コア総合研究センター)、鈴木 勝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構・海底資源センター)、高橋 嘉夫(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、伊藤 孝(茨城大学教育学部)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/25 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[MZZ44-P04] 南太平洋ペンリン海盆における古地磁気によるマンガンノジュールの回転検出

*小田 啓邦1片野田 航1,2臼井 朗2村山 雅史2山本 裕二2 (1.産業技術総合研究所地質情報研究部門、2.高知大学)

キーワード:マンガンノジュール、古地磁気、マグへマイト

マンガンノジュールは深海で自生する鉄マンガン水酸化物からなるcmスケールの凝固物である。ノジュールは百万年に数mmという非常にゆっくりした速度で成長する(e.g. Verlaan and Cronan, 2020)。ノジュールは数百万年以上前に形成されたにもかかわらず、その多くは深海底表層堆積物に半分だけ埋もれた状態で見つかる(e.g. Usui and Ito, 2004)。ノジュールが完全には埋もれずに絶えず堆積物表面に存在し続けることができる理由として、ノジュールが時々動いたり攪拌されたりすることが考えられる。ここで我々は、南太平洋ペンリン海盆から得られたマンガンノジュール試料の古地磁気記録を用いて、その回転について報告する(Oda et al., 2023)。
ノジュール表面の試料が記録する古地磁気伏角は、現在の地球磁場から期待される値と一致する。古地磁気方位は、ノジュールの表面から中心部に向かって連続的に変化し、概ねある大円上(極の傾斜方位= 53.9°, 傾斜伏角= 32.1°)に乗ることが確認された。このことは、ノジュールが上記極の周りに回転をし、その間に磁化が連続的に記録されていたことを示唆する。本ノジュール試料は深海底の小さな丘のふもとの緩やかな傾斜地点で採取されたことから、ノジュールは深層流による下流側堆積物除去の効果で下流側に転動した可能性が考えられる。岩石磁気分析により、ノジュールには磁鉄鉱の単磁区粒子・Vortex粒子が含まれると示唆される。また、低温磁性分析からは、磁鉄鉱粒子は酸化されてマグへマイトになっていること、特にノジュール中心部では強く酸化されていることが示唆される。回転によって、ノジュールの堆積物から上昇してくる側は酸化的な間隙水(海水)にさらされてきたと考えられる。酸素を多く含む南極底層流は磁鉄鉱が低温酸化することによって2次磁化獲得を引き起こしたであろう。また、ノジュールの回転は堆積物に富む層と、海水起源のvernaditeに富む層の2つの層が混ざった層が全方位均等に成長する環境を作り出しているとも言える。

【謝辞】本研究はJSPS科学研究費補助金(20KK0082/21H0452300)の助成を受けて行われた。また、低温磁性測定は高知大学海洋コアセンターの共同利用(課題番号 21A034/21B032)として行われた。

【参考文献】Oda, H. et al. (2023) G-cubed, doi: 10.1029/2022GC010789
      Usui, A. & Ito, T. (1994). Marine Geology, 119, 111-136.
      Verlaan, P.A. & Cronan, D.S. (2022) Geochemistry, 82, 125741.