日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

現地ポスター発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-06] 高校生ポスター発表

2023年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 現地ポスター会場 (幕張メッセ展示ホール8)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(気象庁)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 13:45-15:15)

13:45 〜 15:15

[O06-P06] 磐田市鮫島海岸での堆砂垣設置方法の提案2

*相曽 俊弥1、*熊倉 陸哉1、*中野 晃佑1、鈴木 由羅1、五十嵐 侑登1、沖 陸正1、西垣 帆高1、川島 瑛斗1 (1. 静岡県立磐田南高等学校)

キーワード:海岸侵食、堆砂垣、地元に貢献


本校では,これまで磐田市鮫島海岸を調査地域とした様々な研究を行ってきた.同海岸は年々侵食が進行しており,波による浸食に対して消波ブロックが建設されるなどの対策が取られている.しかし,風による浸食に対しては対策が取られていないため,堆砂垣を設置し飛砂を堆積させることによる,海岸侵食の抑制を考えた.本研究では,鮫島海岸における効果的な堆砂垣の設置方法と構造を検討する.
始めに,風に対する方向による堆積量の違いを検証するために,丸杭とすだれ,竹でできた断面90cm×180cmの堆砂垣を4つ作成し,それぞれ丸杭が東西方向,南北方向,北東-南西方向,北西-南東方向となるように同海岸に設置した.そして,2021年7月19日から12月27日までの約5ヵ月間の堆砂垣周辺の砂質堆積物について,堆砂垣を囲む300cm×300cmの範囲内の30地点での高低差を,オートレベルを用いて測量を行った.測量結果からコンター図と,堆砂垣に対して垂直な方向の断面図を作成した.
その結果,南北方向の堆砂垣が最も高低差が大きく,21cmであった.二番目に大きかったのは北西-南東方向の堆砂垣であり,17cmであった.両者とも堆砂垣両側に高い砂丘が形成され,特に堆砂垣西側で標高が高かった. しかし,堆砂垣下部の堆積物は削られ,計測開始時より減少していた.また,アメダス磐田によると調査期間中の最大最多風向は西であった.したがって,西~南西の風に対して直交する向きに堆砂垣を設置すれば,飛砂が多く堆積することが分かった.これは,堆砂垣を通過する際に風速が減少し,飛砂が堆積するためだと考えられる.しかし,堆砂垣に当たった風が堆砂垣下部の砂質堆積物を浸食するという問題があった.そこで,堆砂垣下部に根や葉を埋設することで下部の侵食作用を抑制できるのではないかと考えた.また,同海岸での効果的な空隙率の条件を調べるにあたって,空隙率が小さくなると堆積量が増加するという仮説を立てた.
これを受け,根や葉の埋設の有無と空隙率について条件を変えた堆砂垣を4種類設置し,2022年3月30日から7月18日までの約4ヶ月間,前述した方法と同様に調査を行った.
その結果,下部に根や葉を埋設した堆砂垣は堆砂量が増加しており,堆砂垣の両側に砂丘を形成した.これは,根や葉の重みによって堆砂垣下部の砂質堆積物が固定されたためと考えられる.一方,根や葉を埋設しなかった堆砂垣は下部に風による浸食作用を大きく受け,砂が減少していることが分かった.また,空隙率のみ異なる堆砂垣3種類について,空隙率と堆砂垣風下側の増加量の平均値を比較すると,空隙率が48.6%の堆砂垣が平均増加量15.8cmと最も増加量が大きく,空隙率が23.3%の堆砂垣と16.6%の堆砂垣は増加量が1.6㎝,-1.1㎝と小さかった.また,空隙率が増加するにつれて砂の増加量も増加していることが分かった.これは仮説とは異なる結果であった.
そのため,すだれや竹に見立てた割りばしを垂直かつ等間隔に立てた堆砂垣の模型を作成し,風洞実験を行った.割りばしの隙間は3mm,5mm間隔で,空隙率はそれぞれ37.5%,50%である.模型前面の基準点での風速が6.0m/sになるように設定し,模型の前面,背面でそれぞれ30地点の平均風速を測定した.
結果,前面の平均風速はどちらの模型も6.84m/sであり,背面の平均風速は3mm間隔の模型が5.54m/s,5mm間隔のものが6.15m/sであった.このことから,空隙率が大きいと背面の風速も大きいことがわかった.
この結果から,空隙率が増加すると堆積量も増加する理由は,空隙率が小さいと砂が堆砂垣に衝突して,背面に砂が堆積しなくなる一方で,空隙率が大きいと堆砂垣を通過する風速も大きくなり,通過する風で多くの砂が運搬され,下部の侵食作用を受けにくい背面に砂が堆積するためだと考えられる.
したがって,堆砂垣を西~南西寄りの風に対して直交する向きに設置し,下部に根や葉を埋設し,空隙率を50%程度にすることで効率よく飛砂を堆積させ,鮫島海岸の海岸浸食を抑制することができると結論付けた.
今後は,本研究で分かった条件をもとに堆砂垣を大規模化し,海岸線からの距離による堆積量の変化や,実用性について研究を行っていく.