日本地球惑星科学連合2023年大会

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[O-06] 高校生ポスター発表

2023年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 現地ポスター会場 (幕張メッセ展示ホール8)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(気象庁)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 13:45-15:15)

13:45 〜 15:15

[O06-P15] 源兵衛川でのマイクロプラスチックの採集と、周辺河川との比較

*石川 真菜実1、*伊藤 頌真1、*齋藤 咲弥1、*塩谷 桃花1 (1. 静岡県立韮山高等学校)

キーワード:マイクロプラスチック、源兵衛川、伊豆半島


近年様々な場面で、脱プラスチック化が進行している。そこには様々な意義がある。その一つがマイクロプラスチックの海洋流出を食い止めることである。プラスチックは自然分解しないため、次第にその形を小さいものへと変えていき、マイクロプラスチックとなり海洋生物に悪影響を与えており、その影響はこの後人間生活にも大きな影響を及ぼす。
静岡県東部地区は富士山の伏流水等が湧き水となって現れる現象が多くみられ、三島市は多くの水が湧出している。三島市を流れる源兵衛川もその1つで、湧水で構成された川として知られている。源兵衛川はかつて工場や家庭などによる排水やゴミによって汚染されていましたが、市民や行政のなどによる協力により、きれいな川を取り戻した。マイクロプラスチックのサンプルの採集にあたり、私たちは、マイクロプラスチック量は人口に比例するのではないか、という仮説をたてた。そこで、このようなきれいな川でも、人口が多い地域を流れているから、マイクロプラスチックが確認されるのではないかと考えたため、源兵衛川において採集を行った。前に述べたようなマイクロプラスチックによる影響を踏まえ、源兵衛川のマイクロプラスチックを調べ、他の河川と比較することで、高校生でもできるマイクロプラスチック汚染の防止方法を考えた。昨年度と同様、5㎜以下のプラスチックをマイクロプラスチックと定義し、採集時に使用するプランクトンネットの網目の都合上300μm以上のプラスチックを検出した。
採取方法は以下の通りである。
① 1tの水をエンジンを使いくみ上げ、プランクトンネットを使用して、浮遊物を採取。
② 採取した浮遊物をろ過し、乾燥させる。
③ ②を質量パーセント濃度10%のKOH溶液に2日間つけ、有機物を分解。
④ ③をろ過し、質量パーセント濃度30%のH₂O₂溶液に2日間つけ、更に有機物を分解。
⑤ ⑤をろ過し、質量パーセント濃度47%のNaI溶液を使用し、比重分離を行い、上澄みを回収し、ろ過をして回収。
⑥ 回収した上澄みの残ったものをサンプルとし、光学顕微鏡を用いて観察する。
⑦ ナイルレッド染色液に2日間つける。
この研究方法は、静岡県衛生科学研究所 環境科学部の手法を用いた。
採集地点は、昨年度と同様の伊豆の国市の城池親水公園、狩野川に加え、源兵衛川、近くを流れる桜川の上流、下流とした。
結果としては、今年度採集を試みた源兵衛川、桜川上流、城池親水公園ではマイクロプラスチックは検出されなかった。しかし、桜川下流、狩野川中流ではともに5個のマイクロプラスチックが検出された。採集地点の周辺の人口を示した地図と採集されたマイクロプラスチックの個数を比較すると、源兵衛川、桜川上流の流れる地域の人口は多いものの、これらの河川ではマイクロプラスチックが検出されなかった。また狩野川中流の周辺の人口は、源兵衛川、桜川の流れる地域の人口より少ないものの、マイクロプラスチックが多く検出された。このことから、マイクロプラスチック量は人口に比例しないことがわかった。そのため、私たちは新たな仮説を立てた。それは、河川のマイクロプラスチック量は生活排水の流入量に関係しているのではないか、というものだ。各河川の流れる市役所等に問い合わせたところ、マイクロプラスチックが多く検出された狩野川には生活排水が流入していると分かった。柿田川、沼津港においても同様である。城池については、流入がないため、きわめて少なくなっていた。桜川においては、採集した上流は、湧水地点であるため、生活排水は流入していないと考えられる。下流においては下水道の繋がっている家庭と繋がっていない家庭があるため、生活排水が流入している可能性があるとわかった。
よって、マイクロプラスチックの量は河川への生活排水の流入量が関係し、生活排水の流入がなければ、マイクロプラスチックの量は0に近くなると考えられる。また、生活排水の流入がない源兵衛川は、マイクロプラスチックの河川における問題を解決するための1つのモデルとしてあげられるのではないかと思う。
この研究からマイクロプラスチックによる汚染を防止するためには、生活排水の流入を防ぐ必要がある。このことから、地方公共団体による下水道の整備に加え、下水処理の過程でマイクロプラスチックを取り除くシステムを作れば、マイクロプラスチックの流出はかなり防げると考えられる。
参考文献 
静岡県衛生科学研究所環境科学部『海岸城におけるマイクロプラスチックの調査手法の確立』http://www.pref.shizuoka.jp/kousei/ko510/documents/412slide.pdf
Erni-Cassola et. al. (2017) “ Lost, but found with Nile Red : a novel method for detecting and quantifying small microplastics (1mm to 20㎛) in environment
中嶋亮太ら『海洋マイクロプラスチックの採取・前処理・定量方法』
http://doi.org/10.5928/kaiyou.29.5_129