日本地球惑星科学連合2023年大会

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現地ポスター発表

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[O-06] 高校生ポスター発表

2023年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 現地ポスター会場 (幕張メッセ展示ホール8)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(気象庁)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 13:45-15:15)

13:45 〜 15:15

[O06-P54] トリゴニアの立体模型から当時の生活形態を探る

*菊地 兼太朗1、*先﨑 あかり1 (1. 宮城県仙台第三高等学校)

キーワード:トリゴニア、古生態、立体模型


ジュラ紀から白亜紀にかけて海の潮間帯に生息していた二枚貝の1種であるトリゴニアはディスクと呼ばれる丸みを帯びた形状とエリアと呼ばれる比較的平坦な形状から外殻が構成されており、現生の二枚貝の多くが所有している水管を持ち合わせていないとされている。また、トリゴニアはその研究が多くなされているにもかかわらず、その特徴的な形状の役割については言及がなされていない。そこで本研究ではトリゴニアの立体模型を作成し、それらをもとに実験を行うことで、トリゴニアの生活形態及び生活環境を考察した。
 1つ目の実験では、トリゴニアの形状の潜り込みに与える影響に関する検証を行った。この実験では模型を一定の高さから、背縁下向き、斧足下向き、入・出水部下向き、エリア下向きの4つの異なる向きで砂の上に落とし入れた際にトリゴニアの形状が砂に沈んだ深さを測定した。その結果、入・出水部側下向きが最も深く沈み、次に背縁下向き、斧足下向きとなり、最も沈み込みが浅かったのはエリア下向きであった。
 2つ目の実験では、トリゴニアの生息姿勢の検討と体表に存在する突起物の役割の検証を行った。この実験では模型を背縁下向き、斧足下向き、入・出水部下向きの3つの異なる向きで砂の中に埋め込んで水流を当てた際に、砂から洗い出されるまでの時間を測定し、その間の時間を砂への保持時間として測定を行った。また、実験では突起物のある模型とない模型を用い、それらの保持時間の測定も行うことで、流されにくい生息姿勢の検証と突起物の役割の検討を行った。その結果、背縁下向きが最も保持時間が長く、次に斧足下向きとなり最も保持時間が短いものが入・出水部下向きとなった。また、砂に埋め込んだ全ての向きにおいて、突起物のないものより、あるものの保持時間の方が長くなった。更に、同じ向きにおいて突起物のあるものとないものの数値の差を見ると、背縁下の突起物の有無における差が最も大きく、斧足下の突起物の有無における差が最も小さかった。
 これらの実験を通して、1つ目の実験で最も深く沈み込んだ入・出水部下向きは2つ目の実験で突起物による保持力が比較的働いているにも関わらず、最も保持時間が短いものとなっていたことから、入・出水部下向きの姿勢は砂に潜り込んでいたとしてもすぐに流されてしまうため、生息に適しておらず、斧足下向きにおいては1つ目の実験でも2つ目の実験でも中間的な数値となっていたが、突起物の砂への保持力を向上させる働きを最も活かせておらず、生息に適していないと考察した。そのため、沈み込みが入・出水部下向きの次に深く、砂への保持時間が最も長く、さらに突起物のあるなしにおける差が最も大きい背縁下向きが突起物の構造を活かせており生息に適していると考えた。また、1つ目の実験においてエリア下向きは最も沈み込みが浅かったことから、エリアの形状は潜り込みに適していないと考察した。
 今回の研究結果より現生の二枚貝は斧足側から砂に潜りその姿勢のまま姿勢を維持するのに対して、トリゴニアは斧足側から姿勢を維持する場合は砂から洗い出されやすく、現生二枚貝とは異なる生息姿勢であったことが示唆された。むしろ背縁下向きに砂へ潜り込み、その姿勢のまま安定することで突起の構造を活かし、水流による洗い出しに抗って生息していたと考えられる。