日本地球惑星科学連合2023年大会

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現地ポスター発表

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[O-06] 高校生ポスター発表

2023年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 現地ポスター会場 (幕張メッセ展示ホール8)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(気象庁)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 13:45-15:15)

13:45 〜 15:15

[O06-P76] 新開発アプリケーション『メテオレカ』による流星出現情報の配信

*佐藤 弘一1、*金嵜 巽1、*野口 暖生1 (1. 中央大学附属中学校・高等学校)

キーワード:流星電波観測、Python、深層学習、アプリケーション開発


<はじめに>
 流星電波観測は、特定の周波数を受信できる受信機とアンテナを用いて世界中で取り組まれている。これは、流星が大気圏を通過した際に起こる電離現象によって、地上から発信されたある周波数帯の電波が反射されるという特徴を生かした観測手法である。この観測手法は受信機などの機器やシステム等の構築にコストがかかる。そこで私たちは、「誰でも容易に流星群を観測できるようにする」ことを目的とし、「自動観測」及び「流星出現情報の速やかな通知」の実現を目指してシステム開発に取り組んできた。これまでの研究開発では、流星出現シグナルの解析・検出から流星出現情報配信までの自動化、定量データを安定して収集するシステムの構築、チャットアプリケーションとBOTを用いた流星出現情報の配信、深層学習を用いた流星出現シグナルの解析に成功した。本システムを流星群の電波観測で実用するには、リアルタイムかつ自動で流星出現情報を解析することが求められる。深層学習による解析はデモデータを用いたシミュレーションで正常に動作することは確認できたが、リアルタイムでの実装検証は未達成のままであった。また、従来のチャットアプリケーションを通じた流星情報の配信では、データの送信回数などに制限があった。そこで本研究では、1)深層学習によって流星出現シグナルをリアルタイムで解析・判定するシステムの開発、2)流星出現情報を容易かつ自由に配信できるようなアプリケーション『メテオレカ(Meteoreka)』の開発に取り組んだ。

<手法>
 これまでに私たちが開発した流星電波観測システムは、1)流星電波観測部(流星電波を観測し、取得した電波を音声データに変換する)、2)解析部(音声データのスペクトログラムを作成し、Pythonによる深層学習で解析する)、3)送信部(流星出現情報を配信する)の3つの要素で構成される。
 本研究では次の2つの開発・実験を行った:
【実験I:Pythonを用いた既存の深層学習による解析システムの開発と検証(解析部)】 深層学習による流星電波観測時の音声データの解析をリアルタイムかつ自動で行うシステムを構築し、得られた解析結果を手動による解析結果と比較した。
【実験II:オリジナルアプリケーション『メテオレカ』の開発(送信部)】 流星電波観測で取得した流星出現情報を外部のデータベース(Cloud Firestore)にアップロードするシステムを開発した。また、データベースから流星出現情報の有無を一定間隔で取得するAndroid用アプリケーションを作成し、受信用端末(スマートフォン)にインストールした。実験Iで得られた解析結果をデータベースに入力し、送信側の流星出現情報と受信側(『メテオレカ』)の流星出現情報を比較し、正常にデータ配信が行えるかどうかを検証した。

<結果と考察>
 本研究・開発では、従来の流星電波観測システムの改良及び流星出現情報を通知するオリジナルアプリケーションを開発し、動作検証を行った。まず、解析部において、深層学習によって音声データをリアルタイムかつ自動で解析するシステムを構築し、実証実験を行った(実験I)。流星電波観測時の音声データをリアルタイムで自動解析した結果と手動解析した結果を比較し、両者が一致することを確かめた。次に、送信部において、流星出現情報の送受信を可能とするシステム及びアプリケーション『メテオレカ』を開発した(実験II)。送信部を外部のデータベースに接続し、流星出現情報を自動でアップロード・受信用端末へ配信できるようになった。私たちが開発した『メテオレカ』は、Android OSを搭載したスマートフォンで動作し、一定間隔で流星出現情報の有無をデータベースから取得することができる。また、流星が出現した際には受信用端末に通知される。実験Iで得られた解析結果をデータベースに入力したところ、流星出現情報(流星出現の有無・出現時刻)が送信側と受信側で一致したことから、本アプリケーションが正常に動作していることが確認された。データベースには送受信数の制限があるものの、従来のチャットアプリケーションよりも小さな制限のもとで情報を配信できるようになったといえる。

<結論と今後の展望>
 従来の流星電波観測システムに、深層学習を用いたリアルタイムでの解析システムを搭載し、流星出現情報の新たな配信手段としてアプリケーション『メテオレカ』を開発した。このアプリケーションによって、従来システムにおける制限(送受信数など)を緩和することができた。現状、本アプリケーションによって送受信できる情報はリアルタイムの流星出現情報のみに限られている。今後は、過去の流星観測データや流星群に関する情報(極大日や出現方向など)を取得・閲覧できるように改良を続けたい。