日本地球惑星科学連合2023年大会

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現地ポスター発表

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[O-06] 高校生ポスター発表

2023年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 現地ポスター会場 (幕張メッセ展示ホール8)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(気象庁)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 13:45-15:15)

13:45 〜 15:15

[O06-P78] ICP-AES分析を用いた鹿児島県与論島の「鳩の湖」の水についての検証

*竹内 詩帆1 (1. 鹿児島県立与論高等学校)

キーワード:水の硬度、ICP-AES、地下水、雨


隆起サンゴ礁から成る鹿児島県与論島の東部には「鳩の湖」と呼ばれる、海岸線沿いの
石灰岩表面にある直径20 ㎝、深さ30 cm程の水たまりが存在する。この「鳩の湖」の水
は今まで一度も枯れたことがないという言い伝えが祖父母の代よりも前から与論島内で広
く伝わっている。この「鳩の湖」の言い伝えは与論町内で広く知られているが、「鳩の湖」の水が枯れないかどうかの真偽のほどは分かっていない。本研究では、この言い伝えに関し
て検証するため、「鳩の湖」にたまっている水の起源について、科学的な調査を行うことを
目的とした。
 本研究では、2022年7月10日〜12日に、「鳩の湖」の水および「鳩の湖」付近の、水源地(地下水)2ヶ所にて、250 mlずつ採水した。さらに、雨水を採取した。採水した水は現地で水温とpH測定を行った。採取した水試料は、2022年8月3日に東京大学大気海洋研究所にて、ICP-AES (Thermo Fisher Scientific社製iCAP-6300)を用いて各サンプル中のCa、Mgの濃度を測定し、硬度を計算し た。「鳩の湖」の水と地下水、雨水をCa、Mgの濃度、水の硬度を比較し、「鳩の湖」の水の起源を考察した。
硬度計算には下記の計算式を使用した。
硬度[mg/L]=(Caの濃度 [mg/L]×2.5)+(Mgの濃度 [mg/L]×4.1)

 「鳩の湖」の水の水温およびpH測定の結果、水温31.5 °C、pH9.0となった。同様に「鳩の湖」付近の地下水は水温平均25.5 °C、pH 7.3、雨水は水温26.7 °C、pH 8.2となった。ICP-AESによるCa、Mg濃度測定の結果、「鳩の湖」の水のCa濃度およびMg濃度はそ
れぞれ42.0 ppm、13.5 ppmとなり、硬度は160.3 mg/Lとなった。同様に「鳩の湖」付近の地下水は、平均Ca 145.6 ppm, Mg 12.3ppm, 硬度 413.8 mg/L、雨水はCa 2.6 ppm,
Mg 0.3ppm, 硬度 7.5 mg/Lとなった。これらの結果から「鳩の湖」の水は硬度、Caの濃度どちらも地下水より低く雨水より高く、地下水よりも雨水の値に近いことが判明した。また、現地調査より、周りや穴の中に地下水が湧き出したり流れ込んだりする様子が無いことから、たまった雨水が周囲の岩を浸食しCaやMgを取り込むことで硬度が高くなっていると考察した。ただし、「鳩の湖」の水はMgの濃度が雨水や地下水よりも高くなっており、これについては引き続き調査を行い、考察を進める必要がある。
 今後は継続して水位のデータを取り、季節や降水量による水位の変動から雨水との関係
性を考察する。また、鳩の湖の水を一度抜き、雨水が入らない状態で観察することで引き
続き「鳩の湖」の水の起源を調査する予定である。