日本地球惑星科学連合2023年大会

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現地ポスター発表

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[O-06] 高校生ポスター発表

2023年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 現地ポスター会場 (幕張メッセ展示ホール8)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(気象庁)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 13:45-15:15)

13:45 〜 15:15

[O06-P79] 鹿児島県与論島の津波避難対策の検討

*有村 一花1 (1. 鹿児島県立与論高等学校)

キーワード:津波、防災、共助、ICP-AES、地下水


鹿児島県与論島は周囲23㎞の隆起サンゴ礁からなる総面積20.8 ㎢の島であり、島の地形は複数の段丘面が形成されていることが知られている。島の中央部には明瞭な断層崖が存在し、辻宮断層、朝戸断層と呼ばれている(太田・堀1980)。与論島は沖縄トラフ地震により引き起こされる津波(与論島に津波が10分で到達し、最高津波水位は海抜4.2 mに達する予想)により被害を受けることが想定されている(鹿児島県2014)。また、与論島は離島であるため、地震津波被害による港湾施設の破損や、被災時の天候により必要な物資が届かない場合があるという問題もあり、災害時におけるこの物資・水の確保は重要である。与論町役場では地域住民でまとまって避難する個別避難計画や、ハザードマップの作成を行なっているが、地学的な観点から見た被害の詳細予測や、地域住民の具体的な避難のルート、避難先で水を確保する方法はさらなる検討が必要となっている。そこで本研究は、与論島の地形や地質情報を基に起こりうる津波の被害を予測し、与論島における津波避難対策を提案することを研究の目的とした。
 本研究では、与論島における地形・地質情報に関して文献調査を行い、前述の水確保の問題に着目し与論島の地下水・湧水の調査を行った。そのために2022年7月に採水調査を実施した。採水した水試料は2022年8月に東京大学大気海洋研究所にてICP-AES測定を行い、与論島の地下水の避難先での利用可能性に関して考察した。また、2022年11月に与論町役場においてインタビュー調査を実施し、避難対策について検討した。
 与論島の地質・地形の特徴から、海抜が低い集落である茶花地区に住んでいる高齢者にとって最適なルートについて考案した。また、地震によって水道施設が甚大な被害を受けた場合を想定し、地下水の活用の可能性について検討した。避難先候補の付近にある地下水・湧水のICP-AES測定結果を基に、与論島の水はコイン式給水ポンプの水を携帯浄水器と併用して利用することを考えた。島内各地の水源の水を分析してみたところ、地下水の成分は地質の影響を大きく受けていることが分かった。島内の水は一般的に硬度が高く飲用には検討が必要な場合が多いが、水源の存在する地域によって井水の硬度の高低に傾向があることが判明したため、この情報を災害時の井水の活用計画に生かしていくことができる可能性がある。井水の飲料水としての活用としては更なる検討も必要だが、入浴、洗濯などには利用可能だと考える。
 また、与論町役場へのインタビュー調査の結果、津波が発生した際に起こりうる問題として、高齢者の逃げ遅れが挙げられた。そこで、与論町民の避難の動き出しを早くするための取り組みとしては、与論島オリジナルの非常用持ち出し袋『いだいだポーチ』を作ることを与論町役場で提案した。いだいだポーチは非常用バッグのメインであった、食料や衣服を持ち主の情報に置き換えたものだ。いだいだポーチがもたらす効果には、避難時の忘れ物を減らすことができる、避難にかかる時間を短縮できる、避難所で最適なサポートを受けることができる、準備過程で防災意識を高めることができるなどが考えられる。ハザードマップと合わせて、自分に合うようにカスタマイズし、定期的に地域の人と点検すると言うサイクルを繰り返していく中で、防災意識が高まり、地域住民の連携の力も強くすることができるのではないかと考える。