15:30 〜 17:00
[PCG19-P07] エウロパ大気の地上望遠鏡可視近赤外観測による軽金属元素の探索
木星衛星エウロパは表面が固体のH2O を主とする氷で覆われており、液体の地下海を有すると考えられている。また表面には、内部からの熱的な影響を受けて形成されたと考え られる内因性の地形的特徴が多く存在する。探査機や地上望遠鏡による観測で得られたスペクトル形状の評価から、Na-, Mg-塩の存在が示唆されており、その分布に地形との相関が見られることから内因性の物質であると考えられている。一方、同じく存在が示唆されている硫酸水和物には地形との相関が見られず、外因性の物質であると考えられている。これらの物質は内因性か外因性かを問わず、スパッタリングや昇華によってエウロパの希薄大気を形成すると考えられるため、大気組成や分布、時変動を理解することは、衛星形成の材料物質や進化過程、衛星間の物質輸送過程の解明に極めて重要である。しかしこれらの調査は、限られた表面領域に対する近接探査や数夜のみの地上望遠鏡観測など未だ限定的である上、地上望遠鏡による可視近赤外領域の観測はほとんど存在しない。加えて地上望遠鏡での観測では、地球大気による吸収の影響を高い精度で除去することが求められる。
そこで本研究では、北海道大学が所有する口径1.6 mのPirka望遠鏡を用いて、計30夜にわたるエウロパの可視近赤外波長領域(約400~930 nm)における撮像観測を行った。観測から得られたデータの解析では、Python/Astropy を用いた開口測光ツールを構築し、計4,500 以上の撮像データを測光解析することで簡易的な分光を行った。地球大気補正を高精度に行うため、測光標準星を用いる方法と放射輸送計算による地球大気モデルを用いる方法の2 通りを採用した。測光標準 星を用いる方法では地球大気中の酸素分子による吸収が残ることから、エウロパと標準星のエアマス差が原因で地球大気補正が不完全であることが示唆された。そこで標準星のエアマスと光子数の関係から、エウロパと標準星が同じエアマスとなった時の光子数を近似的に推定することによって 地球大気補正を行った。その結果、酸素分子による特徴的な吸収が軽減し、地球大気補正の高精度化を確認した。これと地球大気モデルを用いて行った補正結果からエウロパの反射率スペクトルを算出し、輝線と吸収線の有意性の評価を行った。 輝線の評価では、波長445, 559, 644 nm に存在する中性カルシウムに起因する輝線を、2σを超える強度で検出した。これは今までに検出されたことのない結果である。これらの輝線は、エウロパ表面の先行半球~反木星側半球にかけての領域を観測した際に検出しており、先行半球で電子密度が低いとした先行研究の観測結果と整合的であった。
そこで本研究では、北海道大学が所有する口径1.6 mのPirka望遠鏡を用いて、計30夜にわたるエウロパの可視近赤外波長領域(約400~930 nm)における撮像観測を行った。観測から得られたデータの解析では、Python/Astropy を用いた開口測光ツールを構築し、計4,500 以上の撮像データを測光解析することで簡易的な分光を行った。地球大気補正を高精度に行うため、測光標準星を用いる方法と放射輸送計算による地球大気モデルを用いる方法の2 通りを採用した。測光標準 星を用いる方法では地球大気中の酸素分子による吸収が残ることから、エウロパと標準星のエアマス差が原因で地球大気補正が不完全であることが示唆された。そこで標準星のエアマスと光子数の関係から、エウロパと標準星が同じエアマスとなった時の光子数を近似的に推定することによって 地球大気補正を行った。その結果、酸素分子による特徴的な吸収が軽減し、地球大気補正の高精度化を確認した。これと地球大気モデルを用いて行った補正結果からエウロパの反射率スペクトルを算出し、輝線と吸収線の有意性の評価を行った。 輝線の評価では、波長445, 559, 644 nm に存在する中性カルシウムに起因する輝線を、2σを超える強度で検出した。これは今までに検出されたことのない結果である。これらの輝線は、エウロパ表面の先行半球~反木星側半球にかけての領域を観測した際に検出しており、先行半球で電子密度が低いとした先行研究の観測結果と整合的であった。