日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] オンラインポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM09] Space Weather and Space Climate

2023年5月26日(金) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (2) (オンラインポスター)

コンビーナ:片岡 龍峰(国立極地研究所)、Antti A Pulkkinen(NASA Goddard Space Flight Center)、Mary Aronne中村 紗都子(名古屋大学宇宙地球環境研究所)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/25 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[PEM09-P02] 多周波太陽電波放射を用いた太陽EUVスペクトルの周期変動予測

*前田 護1渡邉 恭子1西本 将平1北島 慎之典1下条 圭美2行方 宏介2増田 智3 (1.防衛大学校、2.国立天文台、3.名古屋大学)


キーワード:宇宙天気、太陽放射、太陽活動周期、機械学習

太陽からのX線(~10 nm)と極紫外線(EUV: 10 -124 nm)放射は、地球上層大気中の原子や分子を電離させ、電離圏の形成に寄与している。電離圏は衛星通信や地上の通信に利用されるが、電離圏の環境は太陽の11年周期や太陽フレアなどの現象によって変動するため、安定した通信環境の確保には、電離圏環境を監視・予測することが必要である。
電離圏へ影響を与える太陽からのX線・EUV放射は人工衛星を用いて観測されているため、その観測データは限られている。一方、太陽からの放射のうち電波は地上で観測することができる。そのためこれまで、地球圏環境への太陽放射の影響を見積もる時にはF10.7という2.8 GHzの電波放射がEUV放射のプロキシとして用いられてきた。しかし、近年のEUV放射スペクトルの衛星観測などとの詳細な比較により、F10.7だけでは実際に地球圏環境に影響している放射を説明できないことが分かってきた。
そこでまず本研究では、太陽活動周期変動による電波放射とEUV放射スペクトルの関係について、野辺山強度偏波計(NoRP)とTIMED/SEEのデータを用いて調べた。NoRPは太陽全体からの電波強度を多周波(1, 2, 3.75, 9.4 GHz)で測定しており、TIMED/SEEは0.5 -190 nmのEUV放射スペクトルを1 nmの分解能で測定している。これらの電波放射とEUV放射の関係について2002年から2016年の間の日観測データを用いて調べたところ、どの周波数の電波もEUV放射と相関が良く、特に、低周波数の電波放射がEUV放射との相関が良い傾向が見られた。また、彩層からのライン放射を多く含むEUV放射チャンネルで相関が悪くなり、傾きも変化している様相が見られた。
電波放射とEUV放射では放射機構が異なるため、これらの放射の関係を観測データの比較のみから正確に導出することは難しい。そこで本研究では、Zhang & Paxton (2018)を参考にして、人工ニューラルネットワークを用いて複数周波数の電波観測データから特定の太陽EUV放射スペクトルの再現をおこなった。入力の電波データは、上記のNoRPのデータのみならず、Zhang & Paxton (2018)で用いられていたオーストラリアのLearmonth solar radio telescopes monitorの観測データ(245, 440, 610, 1415, 2695, 4995, 8800, 15400 MHz)も使用した。2002年から2016年の間の日観測データを用いて、TIMED/SEEで得られた太陽EUV放射スペクトルの再現を行ったところ、ほとんどのEUV波長域において相関係数0.90以上で再現することができた。また、EUV放射の再現に特に寄与している電波の周波数を調べたところ、短波長の領域(10 -50 nm)では2 GHzの寄与率が高く、それ以降の波長(50 -124 nm)では、1GHzや2GHzの寄与率が高いなど、波長によって寄与率の高い周波数が変わる事がわかった。
今回の発表では、これらの結果について報告するとともに、太陽活動度の違いによる各周波数の寄与率の変化ついて議論する。