日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM11] 系外惑星

2023年5月24日(水) 15:30 〜 17:00 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:小玉 貴則(東京大学)、野津 翔太(理化学研究所 開拓研究本部 坂井星・惑星形成研究室)、川島 由依(理化学研究所)、森 万由子(東京大学)、座長:森 万由子(東京大学)、小玉 貴則(東京大学)

15:30 〜 15:45

[PEM11-17] 惑星科学、生命圏科学、および天文学に向けた紫外線宇宙望遠鏡(LAPYUTA)計画と系外惑星観測

*土屋 史紀1村上 豪2山崎 敦2亀田 真吾3中山 陽史3生駒 大洋4桑原 正輝3成田 憲保5小玉 貴則5寺田 直樹1鳥海 森2野津 湧太10,11行方 宏介4木村 智樹6垰 千尋7古賀 亮一8木村 淳9、大内 正己5,4、田中 雅臣1益永 圭2堺 正太朗1吉岡 和夫5鍵谷 将人1塩谷 圭吾2 (1.東北大学、2.宇宙科学研究所、3.立教大学、4.国立天文台、5.東京大学、6.東京理科大学、7.情報通信研究機構、8.名古屋大学、9.大阪大学、10.東京工業大学、11.コロラド大学)

キーワード:木星、地球型惑星、系外惑星

LAPYUTA(惑星科学、生命圏科学、および天文学に向けた紫外線宇宙望遠鏡)計画は、宇宙での「生命生存可能環境」と「構造と物質の起源」の理解を目指し、4つの科学課題の達成を目的としている。課題1では、宇宙で最も詳細な観測が可能な太陽系内天体のうち、木星の氷衛星の地下海環境と地球型惑星の大気進化に焦点を当てる。氷衛星の表層から噴出する水蒸気と衛星大気の連続観測を初めて行い、地下海の生命生存可能環境の理解につなげる。火星と金星では大気下層から宇宙へ輸送される水や温室効果ガスの全球分布とその変動から、大気が宇宙空間へ散逸する条件を明らかにし、大気進化と生命生存可能環境の形成の理解につなげる。課題2では、系外惑星のトランジット観測から外圏大気の広がりを捉え、太陽系の知見を系外惑星に拡張して惑星大気の特徴づけを行う。同時に、系外惑星の環境に影響を与える恒星活動の解明を目指す。課題1と2で鍵となる観測領域は惑星(衛星)と宇宙空間の境界に形成される外圏大気・電離大気である。様々な天体に対してこの領域を観測し、大気の広がりや散逸を制御する惑星や恒星の条件を明らかにする。課題3では宇宙の構造形成史の中で残された基本的な問題の一つである銀河の形成過程に取り組む。銀河の構造にLyαハローが普遍的に含まれているかどうかを調べ、Lyαハローの物理的起源が理論で予言されている星形成を引き起こすコールドストリームと呼ばれる低温のガス降着なのか、それとも衛星銀河や銀河周辺のHIガスかを明らかにする。課題4では、物質進化における未解明課題である重元素合成の解明を目指す。中性子星合体による重元素合成の全体像を把握し、重元素の起源を理解するとともに、超新星爆発からの最初のシグナルを観測し、大質量星進化の最終段階を理解することにつなげる。
これらの課題を解決する手段として、LAPYUTAワーキンググループでは2030年代初頭の打ち上げを目指す高解像度・高感度の紫外線望遠鏡計画を提案しようとしている。紫外線波長域には、大気を構成する主要元素である水素、酸素、炭素、及び窒素の輝線があり、惑星・衛星の大気とその周りに分布する希薄なガスを高コントラストで観測することができる。空間構造を俯瞰的に観測しその長期連続観測を行うことによって、飛翔体によるその場観測では不可能な空間構造と時間変動の分離が可能となる。2030年代の太陽系の惑星探査計画と同時期の観測を実現できれば、科学成果を相乗効果で挙げることも可能になる。紫外線宇宙望遠鏡に求められる設計目標は以下のように設定している。光学系有効面積350cm2、空間分解能0.1秒角、観測波長範囲110nm~190nm、波長分解能0.02nm以下、分光及び撮像視野70arcsec及び180arcsec以上。紫外線は地球大気を透過しないため、宇宙機からの観測が必須となる。口径60cm以上の紫外線宇宙望遠鏡に分光観測装置とイメージャを搭載した宇宙望遠鏡を公募型小型計画の規模で実現を目指している。地球外圏大気の酸素、水素原子発光の影響を低減しつつ放射線の影響を極力回避するため、ひさき衛星(高度約1,000km)より高い遠地点高度を想定している。講演では現在進めている科学目標の定量評価並びに設計目標の実現性検討を中心に計画の進捗状況について発表する。