日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM16] 太陽圏・惑星間空間

2023年5月23日(火) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (2) (オンラインポスター)

コンビーナ:岩井 一正(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、成行 泰裕(富山大学学術研究部教育学系)、西野 真木(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、坪内 健(電気通信大学)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/22 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[PEM16-P04] SUSANOO-CMEの初期パラメータによるCME到達時刻の不定性評価

*磯貝 拓史1,2徳丸 宗利2岩井 一正2藤木 謙一2 (1.名古屋大学大学院理学研究科、2.名古屋大学宇宙地球環境研究所)


キーワード:太陽風、CME、宇宙天気、MHDシミュレーション

過渡的な太陽プラズマ放出であるコロナ質量放出(CME)に伴う惑星間空間擾乱であるICMEが大きな南向き磁場を伴って地球へ到達すると、磁気圏擾乱を通じて通信インフラや電気システムに様々な障害をもたらすことが危惧されている。その到達時刻(ToA)を地球到達以前に余裕をもって予測するため、グローバルな太陽圏MHDモデルによる予報が盛んに試みられ、今日ではWSA-ENLIL(Riley et al. 2018)やEUHFORIA(Pomoell & Poedts, 2018)、SUSANOO-CME(Shiota&Kataoka, 2016)などの宇宙天気予報モデルが開発・運用されている。これらのモデルの多くでは注入するCMEの初期パラメータによりToAが敏感に変化することが知られ、これまでいくつかのモデルでアンサンブルモデリングによって特に重要なCMEパラメータが調査されてきた(e.g. May et al., 2015; Riley et al., 2018, 2021)。これらのモデルでは主に磁場構造を含まないコーンモデルでCMEが再現されている。SUSANOO-CMEはスフェロマク型のフラックスロープをもつCMEを含んだ予報モデルであり、2003年10-11月の連続イベント(ハロウィンイベント)などいくつかの事例で観測されたCME伝播を説明しうる結果が報告されている(Shiota et al. 2016)。しかし、磁束量のように観測が困難ゆえに、重要でありながらその初期値の仮定が妥当であるか十分に確かめられていないパラメータも存在する。実際のICMEで観測されるようなフラックスロープ構造を含んだモデルではその追加変数がさらなるToA不定性の原因となることが示唆されており(Riley et al., 2021)、SUSANOO-CMEにおけるCMEパラメータのToAへの寄与を定量的に見積もることはより正確な予報モデルを実現するために重要である。

本研究ではSUSANOO-CMEの磁束量をはじめとしたCMEパラメータのToAへの寄与を定量的に評価し、さらに太陽観測データや名古屋大学ISEEのIPSの観測データと比較することでパラメータに制限を与えることを目指す。本研究では予備的な解析として、2022年3月28日に発生したM1.0フレアに伴うCMEのシミュレーション結果を解析した。5つの異なる初速度(600, 700, 800, 900, 1000 km/s)と2つの磁束(2×1021 Mx, 3×1021 Mx)を与えた計10個のCMEを同条件の背景太陽風に注入し、それぞれのシミュレーション結果から疑似in-situデータを地球位置で生成した。その結果、初速度1000km/sのCMEが600km/sに対して4-5h程度早く到達するのに対し、磁束を2×1021Mxから3×1021Mxに変化させると、どの初速度においてもToAがおよそ6h変化することが認められた。この結果は、少なくとも磁束量がToAに対して敏感なパラメータであり、磁束パラメータを仮定する範囲をよく絞り込めていない現状の危険性を示唆している。実際の予報の観点からは、観測によって見込まれるパラメータの誤差範囲でのToA変動の定量化が重要であるため、今後は変化させるパラメータの範囲を精査していく必要があると考えられる。