日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS03] 太陽系小天体:太陽系の形成と進化における最新成果と今後の展望

2023年5月24日(水) 09:00 〜 10:15 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:岡田 達明(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、吉田 二美(産業医科大学)、荒川 創太(海洋研究開発機構)、深井 稜汰(宇宙航空研究開発機構)、座長:荒川 創太(海洋研究開発機構)、岡田 達明(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、深井 稜汰(宇宙航空研究開発機構)、吉田 二美(産業医科大学)


09:30 〜 09:45

[PPS03-03] 近地球小惑星表面での岩塊サイズ分布進化

*愛敬 雄太1諸田 智克1 (1.東京大学)


キーワード:近地球小惑星、岩塊、サイズ分布進化、シミュレーション、リュウグウ

近年探査された近地球小惑星であるリュウグウとベヌーはいずれも母天体が破壊された後に再度集積して形成したラブルパイル天体であると考えられており、このような小惑星の表面進化を理解する上では表面構成粒子のサイズ分布が重要である。リュウグウやベヌー表面の岩塊サイズ分布は探査機が撮像した画像から測定されており[1,2]、リュウグウで採取されたサンプル粒子のサイズ分布も測定されている[3]。天体表面構成粒子のサイズ分布は微小隕石の衝突や熱疲労による岩塊の細粒化といったプロセスを経て進化しているため、これらのプロセスによる粒子サイズ分布進化のモデリングは観測された表面粒子サイズ分布から天体表面進化史を解釈する上で重要である。
比較的小さな粒子サイズ(<1m)のサイズ分布進化に関しては静電気力による微小粒子散逸の効果を取り入れた数値シミュレーションが行われており[4]、重力の弱い小さな小惑星では微小粒子が失われて岩塊に富んだ天体表面が形成されることが示されている。しかし、1mより大きな岩塊の破壊による影響やmサイズの岩塊が破壊される上で重要と考えられるmm~cmサイズの衝突体による岩塊破壊はシミュレーションでは考慮されていない。そこで本研究では、サイズ分布を持った衝突体による岩塊破壊を取り込んだラブルパイル近地球小惑星表面での岩塊サイズ分布進化の数値モデルを構築した。シミュレーション結果を実際の小惑星上での岩塊サイズ分布と比較することで岩塊破壊過程の主要因や時間スケールの理解に寄与することを目的とした。
サイズ分布進化モデルには衝突による岩塊破壊と日周熱サイクルによる岩塊の熱疲労という2種類の岩塊破壊プロセスを取り入れ、月面衝突閃光や小火球の観測から推定された地球近傍での衝突体フラックス[5,6]を適用した。本発表では、構築された岩塊サイズ分布進化モデルを用いてリュウグウ表面での岩塊サイズ分布進化をシミュレーションし、実際の岩塊サイズ分布との比較や岩塊上に見られる微小クレーターを利用して測定された岩塊年代との比較を行った結果を報告する。

文献:[1] Michikami et al., 2019, Icarus, 331, 179-191.[2] DellaGiustina et al., 2019, Nat. Astron., 3, 341-351. [3] Yada et al., 2022, Nat. Astron., 6, 214-220. [4] Hsu et al., 2022, Nat. Astron., 6, 1043-1050. [5] Brown et al., 2002, Nature, 420, 294-296. [6] Suggs et al., 2014, Icarus, 238, 23-36.