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[PPS04-P09] あかつき紫外画像の長期間解析から見られた、金星の雲頂高度における風速変動とその要因
キーワード:金星、あかつき、惑星大気、雲追跡風
金星の雲頂付近の帯状平均風速 (平均東西風) は数百日スケールの長期変動を持ち、また赤道に対して北半球の風速が南半球に比べて遅くなる非対称な緯度分布を示す期間があることが、「あかつき」の紫外雲画像解析から示唆されている (Horinouchi et al., 2018)。しかしその変動や非対称性を生じさせる要因は明らかにされておらず、またそれを解明することは金星のみならず惑星大気における大気力学の理解に向けても重要である。そこで本研究では、先行研究 (Horinouchi et al., 2018) の解析期間 (1年4カ月) を2015年12月~2018年12月の3年間に拡張し、帯状平均風速の長期変動についてより詳しく調べるとともに、帯状平均風速が非対称な緯度分布を示す期間とその要因について探った。
解析手法は、JAXAが公開している「あかつき」紫外画像の雲追跡風データセットの東西風を使用し、Horinouchi et al. (2018) と同様に、はじめに現地時間と解析期間における帯状平均風速の時間変動を明らかにした。5日間平均の帯状風速を使用し、北緯20度~35度、北緯20度~南緯20度、南緯20度~35度の3つに分けて解析を行った。次に、得られた7カ月ごとの5つの期間の帯状平均風速の緯度分布を解析した。惑星規模の波による短周期の変動 (Kouyama et al., 2013) を除去するために、10日間平均の帯状風速を使用した。加えて、本研究では非対称な緯度分布を示す期間を明らかにするため、非対称性を示した期間の1か月ごとの緯度分布を調査した。
その結果、解析を行った期間における帯状平均風速は全緯度帯の283nmと365nmの両波長で約7カ月周期の変動が見られ、Horinouchi et al. (2018) での解析期間以降も長期変動が継続していることが明らかになった。変動周期ごとの7カ月の帯状平均風速の緯度分布は、解析期間を3年間に延ばした本研究においても2016年10月~2017年4月の365nmでのみ顕著な非対称性が見られた。この非対称性は、帯状平均風速が最も速くなった北緯40度付近と南緯40度付近の比較から、北緯40度の方が約12 m s-1遅いことを示した。また1か月ごとの帯状平均風の緯度分布を調べたところ、2016年12月と2017年1月の2か月間で顕著な非対称性が示され、それぞれ北緯40度の風速の方が約13m s-1と約21m s-1遅くなった。
この非対称性が生じた要因について、非対称性が見られた2016年10月~2017年4月における7カ月平均の風速場について経度緯度分布と3種類の現地時間 (8ー10時、11ー13時、14ー16時) 別の緯度分布を求め、地形及び現地時間の関係性を調査した。その結果、帯状平均風速が減衰した期間は山岳波が多く観測される現地時間の午後 (Kouyama et al., 2017) のデータが含まれており、その地域は北緯60度付近の金星で最も高い山であるマクスウェル山を含めた山岳地形と一致した。そのため、これらの地形によって生じる山岳波が北半球の風速を弱めた可能性がある。
参考文献
Horinouchi et al. (2018), Earth, Planets and Space, 70:10.
Kouyama et al. (2013), J. Geophysical Research (Planets) 118(1), 37–46.
Kouyama et al. (2017), Geophysical Research Letters, 44, 12, 098–12, 105.
解析手法は、JAXAが公開している「あかつき」紫外画像の雲追跡風データセットの東西風を使用し、Horinouchi et al. (2018) と同様に、はじめに現地時間と解析期間における帯状平均風速の時間変動を明らかにした。5日間平均の帯状風速を使用し、北緯20度~35度、北緯20度~南緯20度、南緯20度~35度の3つに分けて解析を行った。次に、得られた7カ月ごとの5つの期間の帯状平均風速の緯度分布を解析した。惑星規模の波による短周期の変動 (Kouyama et al., 2013) を除去するために、10日間平均の帯状風速を使用した。加えて、本研究では非対称な緯度分布を示す期間を明らかにするため、非対称性を示した期間の1か月ごとの緯度分布を調査した。
その結果、解析を行った期間における帯状平均風速は全緯度帯の283nmと365nmの両波長で約7カ月周期の変動が見られ、Horinouchi et al. (2018) での解析期間以降も長期変動が継続していることが明らかになった。変動周期ごとの7カ月の帯状平均風速の緯度分布は、解析期間を3年間に延ばした本研究においても2016年10月~2017年4月の365nmでのみ顕著な非対称性が見られた。この非対称性は、帯状平均風速が最も速くなった北緯40度付近と南緯40度付近の比較から、北緯40度の方が約12 m s-1遅いことを示した。また1か月ごとの帯状平均風の緯度分布を調べたところ、2016年12月と2017年1月の2か月間で顕著な非対称性が示され、それぞれ北緯40度の風速の方が約13m s-1と約21m s-1遅くなった。
この非対称性が生じた要因について、非対称性が見られた2016年10月~2017年4月における7カ月平均の風速場について経度緯度分布と3種類の現地時間 (8ー10時、11ー13時、14ー16時) 別の緯度分布を求め、地形及び現地時間の関係性を調査した。その結果、帯状平均風速が減衰した期間は山岳波が多く観測される現地時間の午後 (Kouyama et al., 2017) のデータが含まれており、その地域は北緯60度付近の金星で最も高い山であるマクスウェル山を含めた山岳地形と一致した。そのため、これらの地形によって生じる山岳波が北半球の風速を弱めた可能性がある。
参考文献
Horinouchi et al. (2018), Earth, Planets and Space, 70:10.
Kouyama et al. (2013), J. Geophysical Research (Planets) 118(1), 37–46.
Kouyama et al. (2017), Geophysical Research Letters, 44, 12, 098–12, 105.