日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS06] 月の科学と探査

2023年5月26日(金) 09:00 〜 10:15 304 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:西野 真木(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、鹿山 雅裕(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系)、仲内 悠祐(宇宙航空研究開発機構)、小野寺 圭祐(東京大学地震研究所)、座長:小野寺 圭祐(東京大学地震研究所)、池田 あやめ(名古屋大学大学院環境学研究科地球環境科学専攻)

09:30 〜 09:45

[PPS06-03] アポロ14号の人工震源データを用いた仮想的な表面波多チャンネル解析

*池田 達紀1、今里 輝1辻 健2 (1.九州大学、2.東京大学)

キーワード:月、アポロ、表面波探査、地震波干渉法

月の表層を地震学的手法により探査することは、月極域に存在していると考えられている水資源を探査したり、月面基地建設に必要な地盤の安定性を評価したりする上で重要である。しかしながら、月面へ運搬できる探査装置(地震計や震源)は経済的理由により限定される。そこで本研究では、アポロ14号の限られた地震計や震源を用いて実施された人工地震探査データから仮想的に多チャンネルデータ(ショットギャザー)を合成できる解析手法を提案し、月の表層のS波速度構造の推定を試みた。
 まず、2台の地震計の間にある複数の震源データに対し地震波干渉法を適用することで、仮想的なショットギャザーを合成した。そのショットギャザーに対し、ノイズの抑制に有効な連続ウェーブレット変換を取り入れた表面波多チャンネル解析 (Ikeda and Tsuji, 2019)を適用することで、安定した表面波分散曲線の推定に成功した。さらに分散曲線の逆解析から、アポロ14号着陸地点周辺の表層から深度10 m程度までのS波速度構造を推定することができた。得られたS波速度構造では、地表から深度3 m程度までは60 m/s程度のS波速度であったが、3 m以深では速度上昇がみられ、深度10 m程度までは75~85 m/sのS波速度がであった。この傾向はTanimoto et al. (2008)により雑微動から推定されたアポロ17号着陸地点周辺のS波速度の傾向と同様であった。
 提案した人工震源を用いた解析手法を利用することで、利用できる地震計や震源が限られている場合においても浅部探査が可能である。さらに人工震源を利用しているため、雑微動を用いた探査に比べ短時間で効率的な探査が可能である。そのため、提案した手法は今後の地球外での浅部構造を対象とする地震探査において有用な手法となりうる。


本研究で利用したアポロデータはISAS/JAXAの科学衛星運用・データ利用センター (C-SODA: Center for Science-satellite Operation and Data Archive)によるDARTS (Data ARchives and Transmission System) から取得したものを利用した。