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[PPS07-P25] 原始惑星系円盤内側領域への揮発性元素輸送と木星形成
キーワード:原始惑星系円盤、木星形成、揮発性元素
木星の大気は、太陽に比べてO, C, Nや希ガスのような超揮発性元素に一様に富むという著しい特徴を持つ(e.g., Wong et al. 2004; Bolton et al. 2017)。この特徴は、木星がいつ・どこで・どのようにできたかを明らかにする重要な鍵として注目されている。
木星大気の高い揮発性元素濃度は、原始太陽系円盤の遠方や影領域といった極低温領域(< 30 K)で、ダスト上に凍結した超揮発性物質を濃集することで説明されてきた(e.g. Bosman et al. 2019, Ohno & Ueda 2021)。しかし遠方形成説には、円盤が極低温となる領域からの軌道移動が難しい、遠方で形成した木星は現在の位置に至るまでに成長し過ぎてしまう、といった困難がある(e.g. Bitsch et al. 2019, Tanaka et al. 2020)。影領域説においても影領域の維持と木星形成が両立するか明らかでないという課題がある。
上記2説とは異なり、極低温環境での木星コア形成を必要としない元素濃縮機構として、揮発性物質を閉じ込めた非晶質氷が円盤外側から木星軌道近傍へ移動した可能性が提案されている(Monga & Desch 2015; Mousis et al. 2019)。この機構は多くの揮発性元素を円盤内側に輸送可能であるが、これまでの理論計算ではアモルファス氷への物質ごとの捕獲効率は考慮されていない。実際、N2は非晶質氷に閉じ込められにくいことから、アモルファス氷による木星大気の窒素濃縮は困難である(Bar-Nun et al. 2007)。
本研究では、アモルファス氷による揮発性元素輸送に加え、揮発性のより低い塩を考慮することで、窒素を含めた木星の一様な元素濃縮が達成された可能性を検討する。近年、探査機Rosetta による彗星67P の複数の観測は、従来円盤内側で最も主要な窒素キャリアとされていたNH3よりもはるかに豊富な半揮発性のアンモニウム塩が彗星に含まれている可能性を示している(Altwegg et al. 2020; Poch et al. 2020)。星間氷の観測も全窒素のうち20-30%が低揮発性成分であることを示しており(Öberg & Bergin 2021)、豊富な窒素が円盤内側に塩などの低揮発性物質の形態で運ばれた可能性が高い。
我々は、原始太陽系円盤の氷ダストの主要な窒素キャリアにアンモニウム塩、その他の揮発性元素キャリアにアモルファス氷中の揮発性ガスを仮定し、惑星が存在する円盤におけるダスト/ガスの移流・拡散に伴う時間進化とダストから解離・昇華する揮発性物質蒸気の時間進化を計算した。惑星成長にはガス降着による成長過程を考慮し、降着するガス及び揮発性物質蒸気量から惑星大気組成を決定した。本ポスター発表では惑星形成位置及び時間、ダストに含まれる揮発性元素量が惑星組成へ及ぼす影響について紹介するとともに、木星が円盤内側で形成された可能性について議論を行う。
木星大気の高い揮発性元素濃度は、原始太陽系円盤の遠方や影領域といった極低温領域(< 30 K)で、ダスト上に凍結した超揮発性物質を濃集することで説明されてきた(e.g. Bosman et al. 2019, Ohno & Ueda 2021)。しかし遠方形成説には、円盤が極低温となる領域からの軌道移動が難しい、遠方で形成した木星は現在の位置に至るまでに成長し過ぎてしまう、といった困難がある(e.g. Bitsch et al. 2019, Tanaka et al. 2020)。影領域説においても影領域の維持と木星形成が両立するか明らかでないという課題がある。
上記2説とは異なり、極低温環境での木星コア形成を必要としない元素濃縮機構として、揮発性物質を閉じ込めた非晶質氷が円盤外側から木星軌道近傍へ移動した可能性が提案されている(Monga & Desch 2015; Mousis et al. 2019)。この機構は多くの揮発性元素を円盤内側に輸送可能であるが、これまでの理論計算ではアモルファス氷への物質ごとの捕獲効率は考慮されていない。実際、N2は非晶質氷に閉じ込められにくいことから、アモルファス氷による木星大気の窒素濃縮は困難である(Bar-Nun et al. 2007)。
本研究では、アモルファス氷による揮発性元素輸送に加え、揮発性のより低い塩を考慮することで、窒素を含めた木星の一様な元素濃縮が達成された可能性を検討する。近年、探査機Rosetta による彗星67P の複数の観測は、従来円盤内側で最も主要な窒素キャリアとされていたNH3よりもはるかに豊富な半揮発性のアンモニウム塩が彗星に含まれている可能性を示している(Altwegg et al. 2020; Poch et al. 2020)。星間氷の観測も全窒素のうち20-30%が低揮発性成分であることを示しており(Öberg & Bergin 2021)、豊富な窒素が円盤内側に塩などの低揮発性物質の形態で運ばれた可能性が高い。
我々は、原始太陽系円盤の氷ダストの主要な窒素キャリアにアンモニウム塩、その他の揮発性元素キャリアにアモルファス氷中の揮発性ガスを仮定し、惑星が存在する円盤におけるダスト/ガスの移流・拡散に伴う時間進化とダストから解離・昇華する揮発性物質蒸気の時間進化を計算した。惑星成長にはガス降着による成長過程を考慮し、降着するガス及び揮発性物質蒸気量から惑星大気組成を決定した。本ポスター発表では惑星形成位置及び時間、ダストに含まれる揮発性元素量が惑星組成へ及ぼす影響について紹介するとともに、木星が円盤内側で形成された可能性について議論を行う。