10:45 〜 12:15
[SCG53-P03] 深層学習を用いた単独観測点からの波動伝播方向推定:波動場実況把握の高度化を目指して
キーワード:地震動即時予測、緊急地震速報、機械学習、深層学習、波動伝播
巨大地震や連発地震発生時においても安定して地震動即時予測を行うため,近年では震源推定をせずに揺れから揺れを直接推定する手法が提案されている(例えば,Hoshiba and Aoki, 2015; Kodera et al., 2018).これらの揺れから揺れを予測する手法は,波動場の実況把握およびその将来予測という2つの処理を通じて地震動即時予測を実施している.最初の波動場の実況把握においては,現行の手法は各観測点におけるリアルタイム震度(功刀・他,2013)(≒波の振幅)の観測値のみに基づいており,伝播方向や見かけ速度といった他の波動伝播に関する物理量は用いていない.従って,波の振幅のみならず,他の波動伝播に関する物理量の観測値も取り込むことで,波動場の実況把握に対する精度や迅速性を向上させることができると期待される.これを目的として,本研究では深層学習を用いて単独観測点の観測波形から波動伝播方向を推定する方法を開発した.
対象観測点をKiK-netひたちなか(IBRH18)の地上点として手法の検証を行った.2010年1月から2022年7月までに観測された波形のうち,リアルタイム震度0.5以上かつ理論P波時刻の2秒前以前から収録されている波形を抽出した(約1500波形).入力は2秒間の3成分加速度波形とし,理論P波時刻の2秒前から10秒後までを0.2秒ごとにスライドさせて学習用のデータセットを生成した.教師データとなる波動伝播方向は,観測点から見た震央方位に等しいとした.モデルの学習にあたっては,角度の周期性を適切に取り扱うために,伝播方向θを(sinθ,cosθ)の組に変換した上で処理を行った.深層学習モデルはGRU(Gated Recurrent Unit)と全結合層からなるネットワークを採用し,データセットをtrain:validation:test=6:2:2に分けて学習と評価を行った.
学習済みモデルをテストデータに適用したところ,理論P波到達後2秒までの波形を使えば約5割の事例で,10秒までで約2割の事例で,伝播方向が誤差30°以内で推定できた.また,2つの地震が数秒間隔で連続して発生するケースを人工的に生成して手法を適用したところ,2つ目の地震の波形振幅が1つ目の波形振幅よりも大きい場合は,両方の地震に対して波動伝播方向を正確に推定することができた.これらの結果は,深層学習モデルが波形の特徴をうまく学習できたこと,また,連続して地震が発生するといった複雑なシナリオにおいても本研究の手法は適用可能であることを示している.
謝辞:本研究では防災科学技術研究所のKiK-netの観測波形記録を使用しました.本研究はJSPS科研費JP21K03689の助成を受けたものです.
対象観測点をKiK-netひたちなか(IBRH18)の地上点として手法の検証を行った.2010年1月から2022年7月までに観測された波形のうち,リアルタイム震度0.5以上かつ理論P波時刻の2秒前以前から収録されている波形を抽出した(約1500波形).入力は2秒間の3成分加速度波形とし,理論P波時刻の2秒前から10秒後までを0.2秒ごとにスライドさせて学習用のデータセットを生成した.教師データとなる波動伝播方向は,観測点から見た震央方位に等しいとした.モデルの学習にあたっては,角度の周期性を適切に取り扱うために,伝播方向θを(sinθ,cosθ)の組に変換した上で処理を行った.深層学習モデルはGRU(Gated Recurrent Unit)と全結合層からなるネットワークを採用し,データセットをtrain:validation:test=6:2:2に分けて学習と評価を行った.
学習済みモデルをテストデータに適用したところ,理論P波到達後2秒までの波形を使えば約5割の事例で,10秒までで約2割の事例で,伝播方向が誤差30°以内で推定できた.また,2つの地震が数秒間隔で連続して発生するケースを人工的に生成して手法を適用したところ,2つ目の地震の波形振幅が1つ目の波形振幅よりも大きい場合は,両方の地震に対して波動伝播方向を正確に推定することができた.これらの結果は,深層学習モデルが波形の特徴をうまく学習できたこと,また,連続して地震が発生するといった複雑なシナリオにおいても本研究の手法は適用可能であることを示している.
謝辞:本研究では防災科学技術研究所のKiK-netの観測波形記録を使用しました.本研究はJSPS科研費JP21K03689の助成を受けたものです.