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[SCG58-P10] かんらん岩に形成するサーマルクラックによる弾性波速度異方性への影響
キーワード:弾性波速度、異方性、マントル、かんらん岩、クラック
マントルの地震波探査では、地震波速度の異方性が観測されており、これらはマントル対流によるかんらん石の定向配列によって解釈されている(e.g., Kodaira et al., 2014)。近年、海洋プレートの冷却にともなって、サーマルクラックが形成すると考えられているが(e.g., Korenaga, 2020)、マントルに形成するサーマルクラックが地震波速度及び、その異方性に与える影響は調べられていない。そこで、本研究では、加熱処理によってサーマルクラックを形成したかんらん岩の弾性波速度、空隙率の測定からクラックによる弾性波速度の異方性への影響を調べた。
実験試料には、北海道日高変成帯幌満かんらん岩体から採取されたかんらん岩を使用した。 岩石の線構造に平行な方向を X 方向、線構造に垂直かつ面構造に平行な方向を Y 方向、面構造に垂直な方向を Z 方向と定義し、試料の弾性波速度、空隙率の測定を行った。試料は、鉱物の酸化を防ぐために、ガス置換電気炉を用いて、窒素雰囲気下で昇温速度 5℃/minで600℃まで加熱し、2時間の保温後、100℃以下まで空冷した。弾性波速度は、周波数1 MHzのパルス透過法からXYZ のそれぞれの方向で縦波と横波を測定し、異方性を調べた。また、乾燥状態と含水状態で測定し、間隙流体の影響を調べた。空隙率は、ピクノメーターを用いて固相体積を測定し、含浸法から空隙体積を測定して算出した(嶋本ほか, 2006;長瀨ほか, 2020)。
加熱前試料の空隙率は、0.18%〜021%を示し、加熱後は0.56%〜0.72%に増加した。弾性波速度は、X方向で最も速く、Y、Z方向で類似した速度を示した。加熱後の乾燥条件の縦波速度は、Y方向とZ方向で顕著に低下する傾向を示し、縦波速度の方位異方性は、増加した。これらのことから、クラックが異方的に形成していることが示唆される。また、含水条件における縦波速度の方位異方性は、乾燥条件よりも低下する傾向を示し、このような間隙流体の種類による異方性の変化は、扁平クラックが配向した有効媒質理論(Anderson et al., 1974)の結果と類似した傾向である。これらの結果は、マントルに形成するサーマルクラックが、定向配列する可能性を示し、マントル内の流体分布の理解に貢献することが期待される。
実験試料には、北海道日高変成帯幌満かんらん岩体から採取されたかんらん岩を使用した。 岩石の線構造に平行な方向を X 方向、線構造に垂直かつ面構造に平行な方向を Y 方向、面構造に垂直な方向を Z 方向と定義し、試料の弾性波速度、空隙率の測定を行った。試料は、鉱物の酸化を防ぐために、ガス置換電気炉を用いて、窒素雰囲気下で昇温速度 5℃/minで600℃まで加熱し、2時間の保温後、100℃以下まで空冷した。弾性波速度は、周波数1 MHzのパルス透過法からXYZ のそれぞれの方向で縦波と横波を測定し、異方性を調べた。また、乾燥状態と含水状態で測定し、間隙流体の影響を調べた。空隙率は、ピクノメーターを用いて固相体積を測定し、含浸法から空隙体積を測定して算出した(嶋本ほか, 2006;長瀨ほか, 2020)。
加熱前試料の空隙率は、0.18%〜021%を示し、加熱後は0.56%〜0.72%に増加した。弾性波速度は、X方向で最も速く、Y、Z方向で類似した速度を示した。加熱後の乾燥条件の縦波速度は、Y方向とZ方向で顕著に低下する傾向を示し、縦波速度の方位異方性は、増加した。これらのことから、クラックが異方的に形成していることが示唆される。また、含水条件における縦波速度の方位異方性は、乾燥条件よりも低下する傾向を示し、このような間隙流体の種類による異方性の変化は、扁平クラックが配向した有効媒質理論(Anderson et al., 1974)の結果と類似した傾向である。これらの結果は、マントルに形成するサーマルクラックが、定向配列する可能性を示し、マントル内の流体分布の理解に貢献することが期待される。