日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG60] 断層帯浅部構造と地震ハザード評価

2023年5月21日(日) 09:00 〜 10:30 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:浅野 公之(京都大学防災研究所)、田中 信也(東電設計株式会社)、宮腰 研((株)大崎総合研究所)、三宅 弘恵(東京大学地震研究所)、座長:浅野 公之(京都大学防災研究所)、田中 信也(東電設計株式会社)、宮腰 研((株)大崎総合研究所)、三宅 弘恵(東京大学地震研究所)


10:15 〜 10:30

[SCG60-06] 浅部断層モデル化の現状と課題

*三宅 弘恵1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:熊本地震、浅部断層、震源モデル化

地震ハザード評価や断層変位ハザード評価における浅部断層のモデル化は,断層ごく近傍の強震動や永久変位への影響が大きく,断層の幾何形状や断層近傍の地下構造とあいまって定量的な評価が難しい課題である.

浅いすべりに伴う震源近傍強震動の大振幅速度と変位波形は,1992年米国ランダース地震の強震波形を Somerville et al. (1997) が示しているが,断層平行成分に比べて断層直交成分の応答が大きく,破壊指向性パルス (rupture directivity pulse) の議論が展開された.その後1995年兵庫県南部地震では,深いすべりに伴う震源近傍強震動の破壊指向性パルスに関する研究と震源のモデル化が盛んになされた.これらの地震では,断層ごく近傍の強震記録は得られていない.

1999年トルコ・コジャエリ地震と2002年アラスカ・デナリ地震では,断層ごく近傍においての浅いすべりに伴う大振幅速度パルスと変位波形が観測された.しかし,いずれも断層の超剪断破壊 (super-shear rupture) が主要な争点となり,超剪断破壊の際は,断層平行成分が断層直交成分より振幅を上回る指摘がなされた (Bouchon et al., 2001; Ellsworth et al., 2004).

国内では2016年熊本地震において,断層ごく近傍の大振幅速度と変位波形が観測され,複雑な断層の幾何形状や震源破壊過程,既存の地下構造よりも顕著な地盤増幅などの要素を総合的に反映した浅部断層のモデル化が求められるようになった.特に,断層の幾何形状やすべり角の時空間変化に起因して,破壊指向性パルスとフリングステップに明確に分類することが難しい記録が複数観測されており,観測された全成分を再現する震源モデルが求められている.強震動予測における断層の傾斜方向の震源モデル化は先駆的な研究(例えばKagawa et al., 2005)があるが,断層上端のすべりの時空間発展のさらなる把握が重要である.本発表では,2016年熊本地震を中心に浅部断層モデル化の課題を議論する.