日本地球惑星科学連合2023年大会

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[J] オンラインポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG62] 島弧の構造・進化・変形とプレート沈み込み作用

2023年5月25日(木) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (10) (オンラインポスター)

コンビーナ:石山 達也(東京大学地震研究所)、石川 正弘(横浜国立大学大学院環境情報研究院)、篠原 雅尚(東京大学地震研究所)、松原 誠(防災科学技術研究所)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/26 17:15-18:45)

13:45 〜 15:15

[SCG62-P04] 伊豆衝突帯周辺のフィリピン海プレートのイメージング

*松原 誠1佐藤 比呂志2 (1.防災科学技術研究所、2.東京大学地震研究所)

キーワード:伊豆衝突帯、フィリピン海プレート、海洋地殻、海洋マントル

東海地域には、南からフィリピン海プレートが沈み込んでいる。西南日本側では四国海盆を構成する海洋プレートが沈み込むが、伊豆-小笠原弧を構成する島弧地殻が沈み込む伊豆半島の北側では伊豆-小笠原弧と本州弧の衝突帯が形成されている。フィリピン海プレートの低速度海洋地殻と高速度海洋マントルの組み合わせや低角逆断層型の地震活動から駿河湾以南では沈み込むフィリピン海プレートの形状が推定されている(例えばHirose et al., 2007; Matsubara et al., 2021)。Nakajima and Hasegawa (2010)では関東から西南日本まで連続的につながるフィリピン海プレートの上面の深さ分布が推定されている。南海トラフでは西南西-東北東走向でフィリピン海プレートが沈み込んでいるが、駿河トラフではほぼ南北走向で沈み込み、衝突している。その結果、スラブの折れ曲がりに伴う重なり合い、沈み込みに伴う海洋地殻の剥離とユーラシアプレートの地殻への付加などが生じていると考えられる。本研究では、伊豆衝突帯北西部におけるスラブの形状についてMatsubara et al. (2021)やMatsubara et al. (2022)のトモグラフィーの結果から考察した。
 Matsubara et al. (2021)では東海地域において、36728個の自然地震や発破からの1,577,144個のP波、1,537,139個のS波到達時刻データに、Matsubara et al. (2022)では日本全国を対象として295,347個の自然地震や発破からの14,861,531個のP波、12,278,029個のS波到達時刻データに、Zhao et al. (1992)に観測点補正値やスムージングを導入した手法(Matsubara et al., 2004; 2005)を適用し、トモグラフィー解析を行った。東海地域の解析では水平方向の分解能は約10kmであるが、深い地震が少ないため、深さ60km程度までしか解析できていない。一方、日本全国を対象とした解析では、水平方向の分解能は約20kmであるが、深い地震も多く用いているので、深い領域まで解析できている。本解析では、浅部は東海地域の解析結果から、深部は日本全国を対象とした結果から伊豆衝突帯下のフィリピン海プレートのイメージングを検証した。
 水平断面では、三波川帯の高速度域とその南側の四万十帯の低速度域の帯状配列が顕著であり、深くなるにつれて北側へ移動することから北傾斜の構造と調和的である。深さ25km以深では、低速度海洋地殻と高速度海洋マントルの組み合わせが見られるようになり、沈み込むフィリピン海プレートもイメージングできている。
 東西断面を南からたどると、山梨県中部を通る北緯35.7°付近までは、衝突帯から西側へ沈み込む高速度な海洋マントルが見られる。一方、35.8°以北では、速度構造では西側へ沈み込む等速度領域が見られるが、パータベーション構造では水平の構造が主で、明瞭な沈み込みの構造は見られない。
 南北断面を東からたどると、静岡県をかすらない東経139.4°までは南から沈み込む高速度海洋マントルが明瞭であるが、伊豆半島にかかる139.5°以西では深さ25~60km程度まで伊豆半島から衝突域まで水平に横たわる低速度領域が存在し、北緯36°以北の深部に沈み込むフィリピン海プレートにかかわる北へ沈み込む高速度域が見られるが、伊豆半島から衝突帯の北緯35.5度付近にかけては深さ60~90km程度まで、やや低速度域が広がっている。御前崎を通る東経138.2°付近からは、北緯35°付近から深さ40km程度から北へ沈み込む高速度域が復活する。
 丹沢山地を横断する東北東-西南西測線の反射断面やレシーバー関数解析の結果と比較すると、東側の深さ25km付近のP波が6.5km/sの等速度線と調和的である。この線はその西で急激に深さ15~20km程度まで浅くなり、西に向かって深くなっていくが、レシーバー関数においても同じように一度浅くなった後に西に向かって深くなる構造と調和的である。